OWARI
栓を引き抜いた瞬間、鈍色の空と黒い太陽に大きな亀裂が入り、硝子が砕ける様な音が響いた。真っ赤な水が小さな穴の中へと吸い込まれ、底に溜まった肉塊は一瞬にしてどす黒く変色し、軈て塵となって吸い込まれて行く。
己の立つ空間の中を、強い風が吹き上げて、全てを飲み込んで逝く。
海の水が吸い込まれて行く中、時間が動き出すのが分かる。
停止していた腐敗が進み、分解される。
天井は砕け散り、海溝を中心にして海の崩壊が始まった。
もう止まる事はない。
己は嘗て女がそうしたように、己は無に帰して逝く世界を見て笑った。
沈んだ船を引き裂き、漁の終わりを宣告する。
彷徨う演者を腹に収め、共に朽ちる主を今度は己の腹に収めた。
もう二度と、同じ過ちを繰り返させぬ為。
この忌々しい呪い事、喰らい尽くす為。
終わりを齎す為だけに、己はこの海に放たれた。
それが己、イラヲである。
IRAWO mufuji @mufuji
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