第6話 出会い06

 大時計に背に向けて大階段を下りて、左手に向かうと花壇がある。予定通りに案内していたら、ここが最後の場所になるはずだった。

 中心部にあるような庭園と違って大きな噴水はないものの、花の開花時間を計算しつくした花時計がある。

 甘い花の香りが風に散って、薄暮の世界を彩る。

「ごめんなさいっ!」

 珠霞は突然、90度のお辞儀をした。

「昨日、驚かせちゃいました!

 それと、勝手に夢に入って!!」

 恐る恐るといった様子で、珠霞は顔を上げた。

 それから両手を差し出した。白い指が開かれて、手の平に乗っている物が姿を現す。

 無くしていたと思っていたアンバーの襟飾りだった。

「ありがとう、助かったよ」

 葉誦は右手で襟飾りを受け取り、コートの襟につける。

「虫が良いのはわかっています。

 その……友だちになってもらえますか?」

 珠霞は真っ直ぐに葉誦を見上げる。

 ピンクヴァイオレットの瞳の輝きは夕焼けを覆う。

 ここに完璧な夕焼けが閉じこめられている。

 そして、可能性もまた輝いている。

「もちろん。

 これからもよろしく」

 葉誦は言った。

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