挑戦的なテーマで描く、子どもたちと大人たちの物語
- ★★★ Excellent!!!
発達障害を治療するパッチが普及している世界という設定を軸に、様々な人間ドラマが展開される連作短編集。
挑戦的なテーマですが、だからこそ社会に真摯に向き合った濃密な作品となっていて、色々なことを考えさせられました。
治療の代償として、記憶が飛んだり、幻聴が聞こえてきたりします。
さらには、元の人格が消えてしまうのではないかとも言われていて──。
作中でも、あえて『治療』という言葉を使っていたり、パッチを使うことに対する意見が様々であったりしていて、作品を通して何か大切な問いを投げ掛けられているように感じました。
発達障害を抱えた子どもへの接し方が、登場する大人によって異なっているところも面白かったです。
どの話も良かったのですが、第四部の話が特に好き。
発達障害の治療が成功し、見違えるように“いい子”になった結果、その親はどんな心情になるのか。
心に訴えかけるような切実さがありました。