姫 - ヒメバチ - 蜂

丸山弌

プロローグ 女子中学生を買った

 女子中学生を買った。

 それは湿気が全身にまとわりつくような夏の日のことだ。

 蝉も鳴かない灼熱の外の世界では、黄色く眩しい太陽光線がそこかしこのコンクリートを焼き、彼女を連れ込んだ部屋は相対的に暗く見えて、隣のマンションの室外機の熱風が窓のカーテンを揺らしている。藍色の室内には緑色が濃い観葉植物と、温風を吐きだす首振り扇風機、散乱したごみ、飲みかけのペットボトル。

 湿り気のある薄い万年床の上に座る彼女は白い手足をセーラー服から伸ばし、人懐っこそうな笑みと上目遣いでおれを見つめている。

「暑いですね」

 襟のリボンを緩め、扇風機の風を横に受けながら、幼い彼女は言う。額には薄っすら汗がにじんでいて、髪の毛が湿気で束になりはじめている。

「ごめん。エアコン、壊れてるんだ」

 布団の頭上にあるエアコンの電源は入っているが、ほとんど扇風機と同じ温度の空気しか吐きだしていない。

「でも、少しだけ涼しい風、出てきました?」

 エアコンの風に触れるように、手を伸ばす。持ち上げられた腕がすらっと伸び、その付け根の隙間から、彼女の脇や白いキャミソールが覗く。おれはごくりと生唾を飲み込んだ。

 女子中学生の千桜。

 今からおれは、この子と――

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