読み始める前の貴方はもうどこにもいない

科学・未来・宇宙のまさにSFでした。
タイトルから「グリーゼ12bの夏の物語だ」と思いながら読み始めたら、まさかの一文目です。
並ぶ専門用語にワクワクし、日本的なものを印象的に思っている中、段々と明らかになる世界観。
そんなふうに物語を追っていると、中盤の展開でガシャンと衝撃が走りました。

恥ずかしながら、自身の知識不足できちんと理解できていない専門的な事柄もあるのですが、それでも物語のドラマやそれを受け取るのに必要な世界観はきちんと伝わってきたように思います。すごいです。
自分にとって比較的馴染みのある、日本的なものや登場人物の名前などに目を向けると、その必要性や込められた意味が伝わってきました。馴染みのない部分についても、作り込まれていることが感じられました。
登場人物二人や人間という種に対しての思い、ディストピアな感覚、大きな時間軸の中で消えていくもの・残るもの、と多くのことを感じましたが、私の中に最も色濃く残ったのはラストです。
二人の残したいものが残った、というロマン的なものもあるのですが、その変容した意味に衝撃を受けました。
タイトルから季節の夏の物語だと思いました。キャッチコピーから明るく威勢良く、未来に目を向けている印象を受けました。でも読了後、それらはまったく別のものになってしまいました。「夏だ!」も「未来は明るい」も攻撃的で誰かの未来を潰えさせるものになってしまいました。
タイトルどおり、間違いなくグリーゼ12bの夏の物語でした。

蛇足:現在のカクヨムでは、一番最後に読んだサブタイトルの横に青丸がつくのですが、それが二つ星が並んでいるみたいに見えて、オッ!てなりました。

その他のおすすめレビュー

きみどりさんの他のおすすめレビュー778