「いない」ことにされてしまった存在たちがチカリと輝く。愛が繋ぐ関係性

誰からも丁寧に扱われないヨータ。周りが良い気分で過ごせるよう立ち回っているのに、みんなは「美味しいとこ取り」するばかり。思わず「死にてぇ」と溢した彼は、それをきっかけにチャランポランなオジサンと出会う。

特大のヒューマンドラマに心がグサグサ刺されました!
ヨータは他人に対して一生懸命なのに軽んじられる、報われない大学生です。でも一方で、自分をさらけ出さず、当たり障りない関係にとどめる、他人と距離を置く人間でもあると思いました。
そんな彼が出会ったオジサンこと桜野は「普通にクズ」。だけど、ヨータにちゃんとひとりの存在として接するし、優しさや思いやりも見せます。

チャランポランな桜野は世渡り上手なだけで、ヨータに対する態度もその「テクニック」的なものなのではないか? ヨータはそれでも、いつもの雑な扱いをされないことに魅力を感じて、この関係にずぶずぶとハマっていっているのでは?
そんな疑いの目を向けてもみましたが、二人は違うと思います。二人の間にはきちんと愛があると思います。それは友愛とも恋愛ともちょっと違う気がする、「愛」です。

ヨータが今のような人との関わり方をするようになったのは、何かそうなるような経験をしてきたからなのではないでしょうか。そして、桜野のヘラヘラして見える態度も、彼の性格だけでなく、何かそうなるに至った秘めたものがあるのではないでしょうか。そんなことを思わされました。
「ひとりぼっちで必死で踊ってるピエロ」という言葉が印象的でした。

ヨータ、桜野、アカリはある意味「いない」ことにされてきた存在だと思います。そんな人間たちがお互いを見つけて、居心地いい関係を形作っていく物語。
素晴らしい作品でした!

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