第2話 出来合いのお弁当でも、美春お姉さんがいれば最高のディナー

 シーン2 リビング


(SE:ビニール袋を漁る音)

(主人公、袋から弁当を取り出している)

(美春お姉さん、主人公の左隣に座るように浮いている)

「じゃっ、お隣失礼しまーす!」

「やっぱりその袋、今日の夕ご飯が入ってたのね~」

「しかもよく見たら、おいしいお弁当屋さんのじゃーん。あたし、そこのハンバーグ弁当よく食べてたな~」

「今日のメインは……おおーっ! とんかつだー!」

「う~、見てるだけでもお腹減ってきたな~」

(主人公、一口食べるか聞く)

「いや、食べるのは無理だし、実際にお腹が減ってるわけじゃないんだけどね」

「なんていうか生前の記憶とかなつかしさが蘇ったっていえばいいのかな?」

「とにかく、おいしそう~」

(主人公、食べ始める)

「は~い、いっぱい食べなよ~。あたしが作ったわけじゃないけど!」

「こういう出来合いのお弁当ってさ、『栄養バランス偏って身体に悪い!』って言われがちだけど、めちゃくちゃおいしいんだよね」

「ご飯作りたくないぐらい疲れてるときに食べると、おいしさが身体に沁みるんだよね~」

「……そうそう! 身体に悪いものほどおいしいのよ! 良いこと言った!」

(主人公、とんかつを食べ終え、その下のパスタを食べ始める)

「おっ、揚げ物とかお肉の下のパスタもちゃんと食べる人?」

「素晴らしい、仲間だわ。いぇいっ」

(主人公、美春お姉さんとハイタッチ)

(SE:パチンと鳴らない代わりに、浮遊音)

「たまにそのパスタ残す人いるじゃない? あたし、あれ信じられなくてさ」

「食べ物残してるのと同じでもったいないし、良くないな~ってずっと思ってたんだよね」

「わかる~、めっちゃわかるわ」

「お肉のソースとか、とんかつの衣と油がついてて、お弁当のパスタ特有のおいしさがあるんだよね~」

(主人公、自炊がだるいと愚痴る)

「自炊ね~……。あたしも苦手だった」

(主人公、驚く)

「えっ、全然。あたし、ちゃんとしてなかったよ」

「君みたいにお店のお弁当で済ませちゃうことも多かったし」

「女子力あるように見えた? 全然な~い。でも、嬉しいぞ。ふっふっふ……」

「あ、でもたまーに頑張って作り置きのおかずとか作ってたことあったなー。たまーにだけど」

「んー、例えばねえ。味玉とか」

「卵ゆでるのを一番頑張ればあとは楽なのよ~、これが」

「天才が卵に味付けできる専用の容器を作って、百均で売ってくれてるから簡単に作れるんだな」

「今度、試してみるといいぞ~」

「でね、あたしからのスペシャルアドバイス」

「耳貸して」

(美春お姉さん、主人公の左耳に口を寄せてひそひそ)

「……味つけのめんつゆに、食べるラー油とねぎを入れると最高においしい」

「……あたしと君だけの秘密ね?」

(美春お姉さんと主人公、元に戻る)

(主人公、ちょっと感動)

「ま、秘密にするほどのことでもないかー」

「そうなんよ~。ご飯も進むし、お酒があればいくらでも飲めちゃうんだよね~」

「食べラーは正義。間違いない」

(主人公、ごちそうさま)

「やっぱり、男の子は食べるの早いね~。……って、ちょっとー!」

「ブロッコリー残してるじゃなーい!」

(主人公、目が泳ぐ)

「も~、野菜嫌いは大きくなれないぞ~」

「お箸貸して。……うん、幽霊でもお箸ぐらいは持てるのよ」

(美春お姉さん、お箸でブロッコリーを掴む)

「ほら、あ~ん」

(主人公、食べさせてもらう)

「……うんうん、苦手なものでも克服できるかっこいい大人の男だな。褒めて遣わす!」

「あたしが生きてたら、彼氏にしたいぐらいのイケメンだぞ、今の君」

(美春お姉さん、主人公の頭をぽんぽんする)

「まあ、あたしみたいなずぼらでがさつな女の彼氏とか嬉しくないか~。あっはっは~」

(主人公、顔を赤くして下を向く)

「んっ? なんか顔赤くない?」

「大丈夫? 熱ある?」

(主人公、誤魔化し、額を触って熱を確かめようとしてくる美春お姉さんを制する)

「本当に大丈夫?」

「……食べ終わったから、身体あったまっただけ? そっか。何ともないならいいんだけど」

「そうね、お弁当完食できたんだし、大丈夫よね」

「うん、今度こそ『ごちそうさま』ね!」

「それにしても、人が食べるとこ見てるの久々だったな~」

「何にも食べてないけど、あたしも大満足!。良い夜だわ~」

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