第35話 違和感

 矛はビルを飛び出すと一目散に人気のない場所まで逃げ込んだ。傷を癒やしたいがどうしようもないのでその場に座り込んでいると。前から人が歩いてくる。よく目を凝らすと千鶴だった。

「矛くんだいぶ大雑把な怪我したね」と言うと。

「盾がやられちまった、魔人の王が追ってくるかもしれないどうにかしてくれよ」と矛が言うと

「まだ変な商売続けてたんだ、あと魔人の王はもう追ってこない」と言う。

「そして今日は偶然君に会ったわけじゃなくて、用があってここに来たんだ、最初の頃は君の商売は魅力的でとても画期的だと思ったけれど、最近じゃただ足取りを掴ませるだけの証拠になるだけだって気づいたんだ、だから今日で全てを終わらせようと思っているんだよね」とニコニコした表情で話している。

「そうだ、よかったらリーダーに伝えてくれる?今日で新政府との関係は全て断ち切ると」と言って、千鶴は矛の首を切った。


 奏は今日のことを秋や相川に伝えるとこれで都内で起きている新政府の事件は終りを迎えたと勝手に思っていた。

だが魔人の王になったことなどは誰にも伝えられずにいた。

しかし奏は脳の隅に一つの疑問を浮かべていた。なぜ雷斗は助けを呼ぶと言ったきり来てくれなかったのだろうかと思っていながら帰り道を歩いていると、雷斗から電話が掛かってくる。

「奏くん…本当にごめん、助けを呼びに行こうとしたんだけどビルにも敵がいて、時間を食ってしまい間に合わなかった。でも危なかったよ奏くんが魔人の王に体を変えたおかげでなんとか勝つことができて、矛のことは逃がしちゃったみたいだけど結界オーライだ」と言う。

 

 これなら仕方ない敵が多ければ戦うのに時間がかかってしまうと奏は思っていたが、この言葉が雷斗の誤算だった。

奏は言う「誰にも話してないんだ、魔人の王になったことも盾を倒して矛を逃がしてしまったことも…、それをなぜ雷斗が知っているんだ」

電話越しから雑音が聞こえる雷斗が黙っていると「それはこの私が新政府のリーダーだからですよ」とキマった目をした雷斗が背後から語りかけてきた。

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