友達に傷つけられた少女を救ったのは友達の思い

 小学校の親友たちと再会したら、別人のようにおしゃれでかわいくなっていた……! 中学生女子の高橋かなえは衝撃を受けると同時、コンプレックスに囚われた自分だけが取り残されているように感じてしまう。ずっとみんなでチョコを作ってきたバレンタイン、それが近づいてくるのが憂鬱で、ついつい苛立つ彼女だったが……

 コンプレックスは誰もが抱えているもので、なにをきっかけに表出するかわかりません。かなえさんもそれに苛まれる女子なのですが、著者さんの筆が為すコンプレックスの源すなわちトラウマの抉りかた! これがすばらしいのですよ。

 他人からの心ない言葉の重さも受けた傷の痛みもとにかくリアルで、ひと言で表せば「わかる」。

 だからこそ、かなえさんの友達に対する苛立ちや痛々しい自己嫌悪もわかりますし、どん底に囚われた彼女を友達の言葉が救ってくれることがうれしくて、先に進もうと決める彼女を応援したくなるのです。

 ひとりの少女のささいな、でもなにより大きな成長を描く青春ストーリーです。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)