深い海溝に沈み込むような耽溺と酩酊

 女が過去の己を思い出し、淡々切々と『絵を描くこと』について語りだす。『褒められるために絵を描いていた』、愚かな少女時代――。

 自虐的というには乾いて冷酷にも思える語り口と、まとわりつく感情の湿気は、読み手を少しずつ、作者の世界へ沈み込ませるような、深さがあります。

 少女時代の主人公は、褒められるための絵を描くために様々な工夫をこらし、そこには努力家の一面もあります。しかし、その幼さに一抹の痛ましさと、哀しさが表現されています。

 その彼女が、絵を描くことに向き合うのか、曖昧に他者へ達成感を委ね続けるのか。

 褒められる才能があると自認する彼女の『今』にいたるまで、ぜひ読んでほしい。深い耽溺と、暗くしかし心地よい酩酊があります。

 タイトルの梟に出会った時、誰しも心にある自分を見つけることができるのではないでしょうか。