梟の報酬
ぬりや是々
第1話
小学五年生から中学二年生にかけて通っていた絵画教室が今年で二十周年を迎え、記念の展示会が開催される事、また周年誌が発行される事を妹からの連絡で知りました。
絵画教室の卒業生達から一言欲しい、という依頼でした。なぜ、その連絡が妹から来たのでしょうか。私が「ん? あんたそこで働いとるの? それともボランティア?」と聞くと、それは成る程、という理由でした。
その頃の私は、まあ、今とそれ程変わりませんが、とにかく自分の事しか見えていませんでした。
私を追うように絵画教室に入った妹が、私が卒業した後もきちんと通い、高校では絵画部に所属していた事を知りませんでした。造形大学の入試対策では、デッサンや油絵などの基礎を改めて学ぶために、絵画教室にお世話になっていた事も初めて聞きました。そして今でも絵画教室の先生と交流があるそうで、地元を離れてしまった私に、妹づてで今回の話が来たようです。
私が成し得なかった絵画や造形の道を、それ程興味があったように見えなかった妹が進んでいる。そして今でも、特に報酬はなくとも手伝いをしているのは、彼女にとってこの絵画教室が自分のルーツであると感じているからでしょう。
共通の話題で、いつもより多弁な妹と電話をしている間、私はずっと違和感を持って聞いていました。妹の認識の中では、絵画教室が私にとってもルーツであるように語られていたのです。
なるほど、妹にとってそれは間違いないでしょう。でも私には違います。
何故なら私は、この絵画教室に通っていた間、ほとんどそこで絵を描かなかったのです。
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