この JK、頭のネジ穴を弾丸で留めてやがる!
- ★★★ Excellent!!!
「剣とミリタリーの異世界戦記」とくれば、中世的世界に銃が持ち込まれた展開を想像するのですが……冒頭で、私たちがかつて歴史上に見たことがない世界を見せつけられます。
存在しなかった世界に JK。そうなれば、この "JK" は「ありえない」。この "JK" を JK と思えば、痛い目に……いや、火傷を負い……いや、銃創を負いますよ……
ぶっ飛んでます。しかし恐ろしく剛毅で頑健な精神です。でなければ超人的な戦闘能力を使いこなせません。
頭のネジが抜けているという言い回しがありますが、ネジ穴が塞がっていなければ振り回すと外れます。この JK は精神の全てを戦闘目的で結合させています。
この JK、頭のネジ穴を弾丸で留めてやがる! その手で戦場を生き延びてやがる!
ただし登場人物が全てぶっ飛んでいる訳ではありません。キャッチコピーにも紹介されるオジさん騎士は冷静かつ通常に合理的な軍人であり、戦場を離れれば貴重な紳士でもあります。いやあ、このお人がいらっしゃらなければ、戦果は上がっても情景がどれだけが迷走していたか……
軍事は、冷徹な技術と兵站の運用を、殺人と被殺害を怖れぬ精神でつなぎ止める、理性と狂気の接合で成り立ちます。筆者は軍事に詳しいのでしょう。両方を兼ね備えています。慣れぬ人間、例えばこのレビューの筆者、は狂気に言葉を失ったりしますが、そこまで突き詰めねば軍事ではありません。それは善悪を抜きにして。そう、善悪を抜きにして、やったもん勝ち。
強い奴が強い。このトートロジーがむき出しになる戦場で、読者は無敵な存在の技術として精神を体感します。読んでいるだけで頭が振り回されます。まぁ、普段は体験できない非日常です。
異世界に転移したからには、キチンと非日常を。そして人間の域を超えた全能を。その願いを読者の期待以上に叶える一作です。