虚しい心を変えた少年

へこあゆ

第1話

わたしは幼い頃から先天性の病に侵されており、20歳の誕生日は迎えられないだろうと言われてきた。

わたしの人生のほとんどは入院生活であった。


19歳のある日、病室の窓から雪がしんしんと降っていた。

またこの季節か、とわたしは深いため息をついた。

この季節になるとわたしの体調は急激に悪化する。

ここ数ヶ月、投薬治療はしておらず、終末期の治療を施されていた。

わたしは雪が溶ける季節を迎えられないと心の奥で感じていた。


わたしのいる病棟では皆、終末期に入っており、ほとんどの人が生きる希望を失っていた。

毎週2回、理学療法士に患者が集められ、各々好きなことをする時間がある。

折り紙を楽しむ人、ナンプレを楽しむ人、ペン習字を楽しむ人、いろんな人がいた。

しかし皆、どこか憂いの目をしていた。


そんな時、途中から入ってきた男の子がいた。

13歳くらいだろうか。髪は抜け落ち、痩せ細っていた。

そんな彼が、私に話しかけてきた。

「そんな顔しても元気にならないよ。星の王子さまを読んでみなよ。心が洗われるよ。」


わたしは星の王子さまを読むようにした。

王子さまは最期には死んでしまうのだが、その間、色んな人に愛、希望を与えていたようだ。


わたしは今まで治療を後押ししてくれていた家族、友人、病棟の医療従事者、全ての人の愛を思い出したのだ。


この気持ちだけでわたしは生きた価値があったと感じられた。


雪が溶けてまどろむような季節に、わたしはそっと目を閉じた。

最期にあの男の子の顔が浮かび、わたしは笑った。

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虚しい心を変えた少年 へこあゆ @hekoF91

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