第10話 攻防戦

 ドラゴンは逃げ惑う生き残りの洞窟ゴブリンを尻目に羽ばたくとソマー達を追った。


「追って来ます!」


 ロマが指差す先、鬱蒼と交錯する枝葉の間にドラゴンが見えた。

 こちらを完全に捕捉している。


「このままじゃジリ貧だぞ!」


 ベレスの額に脂汗が浮かんでいる。


「ロマ?」

「まだ回復していません!」

「終わったら言って!」

「はい頭!」

「来るぞ!」


 ソマーの注意で、4人は四方に散らばった。

 そこへドラゴンが空を切って着地する。

 短剣が飛んできたが、ドラゴンの鱗に弾かれた。


「くそ!」


 ベレスが歯噛みしてまた走り出す。

 ドラゴンは自分に歯向かって来たベレスを狙う事にした。

 ベレスもドラゴンを引き付けようと3人から遠ざかろうとする。


「ベレス!」


 ソマーの呼ぶ声に、


「俺が餌になる!」


 ベレスは浮き出た樹木の根っこや岩を巧みに跳躍してドラゴンとなんとか距離を保っていた。

 ドラゴンは一気に加速してベレスに迫ったが、ベレスは太い大木の裏に隠れた。


 ドラゴンの開いた口がその大木の幹にかじりついて動きが止まると、ベレスは逃走を再開する。

 と、背後でドラゴンが幹を噛み砕く驚異的な音がした。


 振り返ると、ドラゴンが大顎で伐採した大木をベレスに向かって押し倒していた。


「ぬお!?」


 ベレスは横に飛びのいたが、大木が倒れた時の衝撃で転がった。

 身を起こすと、跳躍したドラゴンの開いた口が迫る。


 ベレスが最後の抵抗に剣を突き出した瞬間、ロマの渾身の電撃魔法の一撃がドラゴンの脇腹を襲い、弾き飛ばした。

 その直後にロマがベレスの傍に着地して手を差し出す。


「早く!」

「助かった!」


 ロマに引き起こして貰い、ドラゴンを見たが、傷一つ無く、パッと起き上がってこちらに向き直った。


「まさか…」

「どこかに隠れないと」

「おい、こっちだ!」


 ドラゴンを間に挟むように立っているソマーが、メナと一緒に手を振っている。


「左右に展開。俺が引き付ける」

「いいわ」


 ベレスが右に、ロマが左に行く形となり、ベレスがドラゴンに敢えて近付くコースを取ったのでドラゴンは彼を追った。

 ドラゴンと交差する直前、ベレスは2本目の短剣をドラゴンの目に向かって投げたが、幸運にもドラゴンの右目に直撃し、ドラゴンは獰猛な叫び声を上げた。


 その間にベレスはドラゴンの下を潜ってソマー達と合流し、ロマを待って走り出した。


 しかし行く手には幅広い絶壁が聳え立っていた。


 ドラゴンの声に振り向くと、潰れた右目から血を流すドラゴンが歩いて来るのが見えた。

 その右目がみるみる膨らみ、元の形に戻る。


「嘘だろ…」


 ベレスが呆然としていると、メナが


「ここに飛び込んで!早く!」


 そこは絶壁の足元の地面に人一人入れるサイズの洞窟の入り口があり、底は闇に包まれて見えない。


「またかよ…」

「ぼやくなってえの!」


 メナがソマーの背中を蹴ると頭から闇に吸い込まれて行った。

 次にメナ、ロマ、最後にベレスと洞窟の中に飛び込み、口を突っ込んだがそれ以上入らないドラゴンの叫び声が洞窟内にこだました。



 続く






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アタック・オブ・ザ・チート・ドラゴン/魔法実験で無限無敵のパワーを得たドラゴンは異世界無双する。 桂枝芽路(かつらしめじ) @katsura-shimezi

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