1合目 森林浴でリフレッシュ
(ザクザクと地面を踏みしめる音。鳥のさえずり)
「登山道に入りましたね。この辺りは道が整備されているので登りやすいですね。傾斜も緩やかですし」
「このくらいなら余裕? ふふっ、頼もしいです」
「しばらくは緩やかな道が続くので、のんびりお喋りしながら登りましょうか」
「先輩、上を見てください」
(さわさわと木々が揺れる音)
「青々と覆い茂った新緑に、雲一つない青い空。枝の隙間から陽の光が差し込んで、キラキラと輝いていますね」
「背の高い木々に囲まれていて、まるで緑のトンネルを歩いているみたいです」
(うーんと後輩が伸びをする)
「空気もひんやりしていて気持ちいいですね~」
「あ、先輩、見てください! ヤマツツジが咲いていますよ!」
(ザクザクと後輩がヤマツツジに近寄る足音)
「わぁー、可愛い。鮮やかな朱色の花は山の中でも目立ちますね」
「先輩、ヤマツツジの花言葉をご存知ですか?」
「燃える思い、なんですって。先輩は燃えるような恋ってしたことありますか?」
「どうだろうって……もしかして、はぐらかそうとしています?」
「そういう私はどうなんだって?」
「んー、燃えるような、というのとはちょっと違いますねー」
「相手のことを少しずつ知って、ゆっくり恋心を育てていった経験ならありますよ。一気に燃え上がる恋よりも、じんわり温めた方が長続きすると思いませんか?」
「そういう恋なら心当たりがあるって? ふふっ、先輩もじんわり温めるタイプなんだ。安心しました」(嬉しそうに)
「せっかくなので、ヤマツツジの写真撮っておきましょうか」
(ごそごそとリュックを漁ってから、カシャっとスマホで撮影する音)
「ん? 先輩、写真撮るのお好きなんですか? へー、知らなかったぁ」
「お休みの日は、カメラを持ってお出かけすることもあるんですね! それは良いことを聞きました!」
「写真と登山は相性抜群ですよ。山を登りながら素敵な景色にたくさん出会えますからね」
「四季折々の植物を撮影したり、野生の動物を撮影したり、楽しみ方がたくさんありますよ。もちろん、頂上からの景色も絶好の撮影ポイントですね」
「ふふっ、ちょっとだけ登山に興味を持ってくれたようですね」
「え? 楽しそうに山を歩く私を撮りたい? そ、それはちょっと恥ずかしいかも……!」
(サワサワと木々が揺れる音)
「先輩、今度は深呼吸してみてください」
「吸って―……吐いてー……吸ってー……吐いてー……」
(深呼吸をする音)
「木と土の香りが身体中に入ってくるでしょう? 自然の匂いで満たされると、負の感情が浄化されるような気がしませんか?」
「日々の生活で息苦しくなった時、山に来てゆっくり深呼吸するんです。そうすると、ちゃんと息ができるようになるので」
「あ、別に思いつめているわけではないですよ? こうやって山でリフレッシュするのが好きという意味です。頑張るためには、心の休息も必要ですからね」
「先輩、今度は耳を澄ませてみてください」
(鳥の泣き声)
「色んな鳥が鳴いていますね。カッコウとウグイスは分かりやすいですね」
「ピーピュルリー、ジジって高い声で鳴いているのはオオルリでしょうか? 青くて綺麗な鳥なんですよ」
(風が吹いて、さわさわと木々が揺れる音)
「木々の揺れる音も心地いい。癒されますねー」
「ん? 本当に楽しそうだなって? あははー……山に来るとついはしゃいじゃうんです。鬱陶しかったですか?」
「そんなことない? いつもと違った姿を見られて新鮮? えへへ、そう言ってもらえると嬉しいです!」
「登山を好きになった理由ですか? それ聞いちゃいます?」
「いいですよ。お話します」
「小学生の頃から家族でよく登山をしていたんです。うちの両親、忙しくて普段はなかなかゆっくり話せないんですけど、年に何回かは家族で登山をするのが恒例になっているんです」
「それがすっごく楽しくて! 山に登っている間なら、普段話せないことも話せるようになるんです。自然の中にいると、心が解放されるんですかね? 私にとって山登りは、大切な人との心の距離を縮める特別なイベントなんです」
「私も将来結婚したら、そういう家族にしたいなぁって……。だから、先輩にも山を好きになってほしくて……」(最後の方は小声で)
「ああ、えっと、もしもの話ですよ!? 結婚なんて、まだまだずっと先の話ですし。それに私、一生結婚できないかもしれないし……」
「え? 売れ残ったら貰ってやる?」
「うー……先輩そういうこと平気で言うからなぁ」(ちょっと照れつつ拗ねたように)
(ザクザクと地面を踏む音)
「じゃあ、売らないで取っておきます……」(小声で恥ずかしそうに)
「なーんてねっ」(明るく冗談めかしく)
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