弐
ホテルの正面、道路を挟んだ向かい側にコンビニがあり、日用品を買いに行くと刺客が居た。刺客たちは『週間少年ジャンプ』を読んで時間を潰していたようだった。
「どうもベータです」
「ミケランジェロ
バラクラバで目元以外全てを隠した中肉中背の男とロールシャッハテストのような柄のマスクを被った細身の男が居た。こんな格好をしている連中は奴らしかいない。こうして向こうから話しかけられるまで、こんな格好を見ても何も感じなかった。一流の暗殺者はどんなに不自然な格好をしていても誰にも気付かれないと聞くが、本当のようだった。
「匿名暗殺コンビか。面倒だ」
闇社会でも有名な暗殺者で、俺でも聞いたことのある名前だ。
いや
「今日はね。貴方を
「ああ」
「こらー!!返事は『はい』か『いいえ』でしょ!!」
ミケランジェロは鉈を振り切り、そのまま俺の腰を掴もうとした。掴ませずに俺は下がる。俺の経験則だが、掴み技を喰らうとだいたい死ぬ。知り合いも掴み技からのコンボで何人も死んでいる。
そして気がつくと俺の眼に毒矢が刺さっていた。いやこの形状は毒ダーツ。ミケランジェロが俺の腰を掴もうとしたのはベータの射線を開けるためか。
「毒ダーツの刺さった気分はどうですか!!悪いに決まっているよな!!」
「別になんとも」
そのまま毒ダーツを抜いて、ミケランジェロに投げる。ミケランジェロの眼に毒ダーツが刺さる。どんなに筋肉を鍛えた人間も眼球を鍛えることはできない。
「うわああ!!毒が毒が!」
「ミケランジェロ
ミケランジェロの眼に刺さった毒ダーツ。毒ダーツから分泌された毒はどんどん広がり、ミケランジェロの身体が紫色になった。ベータは慌てて解毒剤を手にミケランジェロに駆け寄る。この間一秒未満。
それだけの時間があればミケランジェロの腕を砕いて鉈を奪う時間があった。
俺が鉈を奪ったことを認識したベータはミケランジェロの命を諦めて、応戦の構えを取る。ベータが右手の手袋を脱ぐと、その手は紫色に変色していた。毒手か。
慣れない鉈を振り回し、相手の毒手と斬り合う。
鉈と素手で渡り合う技量がベータにはあるようだったが、正面からの殺し合いでは、俺に一日の長があったようだ。
「何故だ……何故僕の毒が通じない」
わざと毒手を喰らう隙を見せると、食いついてくれた。相手の突きを腹筋で掴み、鉈で相手の首を飛ばした。首が飛んでもなお、驚愕の言葉を吐きながらも攻撃を続けようとする相手の戦意には敬意を覚えなくもない。
「体質だ。俺は毒が効かない」
しばらくこのコンビニに顔出せなくなった。ああいう場所で襲い掛かってくるのやめて欲しいな。少し疲れた。休んだら散歩をする。しなければならない。
ホテルに戻ると、
「そういえば俺をどうやって治療したんだ?」
「ラストエリクサーを飲ませ、体力とMPを全回復させたのじゃ」
ラストエリクサーって何?
「負傷しているようじゃな。ラストエリクサー一杯無料キャンペーンは続いているぞ」
良いだろう。俺は毒が効かない。毒杯でもなんでもいくらでも飲んでいつか死ぬ。
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