【少し怖い話】黒い髪の毛

とろり。

第1話 呪い



「黒い髪の毛が落ちていたんですよ」

「はぁ、それで」

「僕、茶髪じゃないですか」

「まあそうですね」

「だから黒い髪の毛が落ちている訳がないんですよ」

「まあ……」

「誰か友達という訳でもない。僕にはもう友達はいませんから」

「友達がいない?」

「ええ、ずいぶん前から僕から去っていきました。さようならって」

「……。アパートは一人で?」

「はい。一人暮らしです」

「猫や犬、つまりペットはどうです?」

「いえ飼っていません」

「不思議な話ですねぇ。黒い髪の毛が茶髪で一人暮らしの君の部屋に落ちていた、と」

「ええ、不思議です」

「まったく」

「ところで僕、人形を貰ったんです」

「どんな?」

「女性の人形ですね。こう、昔ながらの……」

「もしかして黒い髪の毛?」

「そうですね」

「その人形の髪の毛では?」

「まさか、」

「それしか考えられない」

「薄々僕も気にはなっていました。けれど、人形は一人でに動かない。自明の理です」

「ですが」






「昨日、あれから帰って部屋を確認したんです」

「それで」

「落ちていました。黒い髪の毛」

「うーん……」

「確かに同じような黒い髪の毛でした。長さも同じくらい。で、今ここにあります」

「持って来たと」

「ええ」

「ほう。確かに似たような黒い髪の毛だ」

「ですよね」

「少し分析してもいいかな。ついでに君のも」

「教授のご自由に」






「で、榊原さかきばら、どうなったんだよ」

「ん? ああ、配列は教え子と一致してた」

「は?」

「その人形と教え子の髪の毛の分析結果は一致してたわけだ」

「どうして?」

「知らんよ」

「人形、今どこにある?」

「その教え子が処分したんだが、その数日後――」

「数日後……?」

「死んでいた」

「は!?」

「その教え子は人形を処分した寺の近くで首を吊っていた」

「なぜ」

「だから知らんよ」

「……お前、あんまりそういうのに関わるなよ」

「分かっている」






 ピンポーン

「郵便か………………ってなんだよ、これ」

 その人形が榊原を不気味な笑い顔で見つめていた。






2024/8/8

少し修正しました。



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