卒業アルバムの私
山川陽実子
第1話
それは私が中学生の頃のことでした。
卒業間近のある日、私たち三年生には卒業アルバムが配布されました。私は友達たちと一緒に掲載された写真を見ながら談笑していました。
「あ、これ、ひみちゃんだね!」
「ほんとだ!」
友達がひとつの写真を指し示しました。それは入学式の様子を撮影したものでした。新入生たちが緊張した面持ちで立っています。多分校長先生のお話を聞いているのでしょう。
その中に、確かに私の横顔がありました。
私は家に帰り、母に卒業アルバムを見せました。
「ここに、私が載ってるよ」
「ああ、ほんとだねえ」
学校で友達に言われた写真を見せると、母もそう同意しました。
しかし、母はそのあと眉を寄せました。
「いや、違うでしょう。ひみこはこの頃は髪が長くて後ろでひとつにしばってたでしょう」
私はもう一度その写真を見ました。
そこに写っているのは、肩につくかつかないかくらいの長さの髪の私でした。今の髪型の私です。
「似てる子だね」
母はそう言って話をたたみました。私も似ている子の写真だったのかと納得しました。
が、すぐにそれは違うということに気がつきました。私の学校の同じ学年に、ここまで私に似た子はいませんでした。同じ学年の女子の顔は全て知っています。
あれから三十年以上が経ちましたが、いまだにあの写真の子は誰なのか、私にはわかりません。
卒業アルバムの私 山川陽実子 @kamesanpo
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