ブログ〜最恐の体験談〜
田中栄作
ブログ〜最恐の体験談〜
ブログ〜恐怖の体験談〜
目次
#第一章「体験談」
#第二章「オカルトマニア
#第三章「調査」
#第四章「真実」
#第一章「体験談」
私は心霊や都市伝説を信じない。もし仮にそれが本当にあったとして、科学的に証明されているわけではない。もしかしたら、作り話かもしれないと思ってしまうのだ。
これはそんな私が体験した現実離れした体験談だ。
2xxx年4月12日、全てはここから始まった。
私は一人暮らしなのだが、家に帰ると
「誰かいる…」家を出る前に戸締りをしたはず
なら、どうやって入ったのだろうか。
「空き巣か?」そう思い、急いで家の鍵をあけると
「?閉まってる…」鍵を開ける前にドアノブを触り鍵が開いていないか確認するが鍵は閉まっていた。
なら、窓を割って入ったのだろうか。何にせよ、逃げられる前に捕まえて警察に引き渡してやる。そう思い、鍵を開け家の中へと入る。
「あれ…誰もいない?」家の中を見渡すが、人の姿はない。先ほどまで人が居た形跡もなく、家の中の家具などを漁られた形跡もない。
「気のせい…か…」とりあえず電気をつけようと
後ろを振り向いたその時、「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ」振り向くとそこには知らない女性が立っていた。その女性はなぜか目元が見えないが、笑っていた。私は咄嗟に逃げようと後退りしようとしたが、何故か体が動かない。そうしていると女性は手を伸ばし私の頭に触れたその瞬間、私は意識を失った。
目覚めると、私は部屋の床で寝ていた
それ以降、女性が現れることは無くなったが、頭にあざができていた。しばらくは女性が現れることがなくなって安心して生活を送っていたが、2ヶ月が経った頃、奇妙な出来事が立て続けに起こるようになった。
2xxx年6月24日、私はいつも通り仕事を終えて、帰宅した。家に入り、スーツをハンガーにかけて晩酌をしようと冷蔵庫からビールを取り出したとき、トゥルルルトゥルルルと家の固定電話が鳴った。時刻は午後22:00過ぎこんな時間に誰だよと思いながらも電話を取ると、
「はいもしもし、西村です。」
「…………」
「あの?どうかしましたか?
「…………」
ブツツーツー電話が急に切れた。
「イタズラ電話か?ったくなんなんだよ」
受話器を元に戻し、ソファに腰掛ける。
「はぁ…この前のことがあってからこの家にあんまいたくないんだよなぁ」そう呟くと持っていたビールを開け、テレビをつける。
この時間帯のテレビはドラマなどがやっており、何を見ようかと番組表を見る。
「お、これ面白そうじゃん」といいとあるサスペンスドラマをつける。テレビを見ながらビールを飲んでいるとまたトゥルルルトゥルルルと電話が鳴り始めた。
「ったくこんな遅くに誰だよ、またイタズラ電話か、ならガツンと言ってやるか」
そう言い受話器を取る
「はいもしもし、西村です。」
「…………」
「用がないならかけてこないでください迷惑です。」
「………けて」
「は?」
「助けて…」
ブツツーツー 電話が切れる。
「は、何今の…こわ…」電話が切れた後、妙な寒気がしたのでその日はもう寝ることにして眠りについた。
「……けて…」
「んん…なんだここ」
「……助けて…」
「は、さっきの電話の!?」
「なんで…なんで助けてくれなかったの!!!!!」
「や、やめろ、こっちに来るな!やめろぉぉぉぉ」そこで目が覚める。
「はぁ…はぁ…なんなんだ今の夢…」あたりを見渡すともうすでに外は明るくなっていた。
「今何時だ?」時計を見ると時刻は午前10:00を指していた。
「やべ!遅刻だ!」そう言い急いでスマホを確認すると
「あ、今日土曜日か」休日なのを確認すると再び、横になりスマホをいじる。
「なんか…最近ホラー映画の定番ネタみたいな事ばっか起きるのまじでやめてほしい…」
そう1人で呟いた。その時
ピンポーン
「?誰だ?」疑問に思いつつも玄関へと向かう。
「は〜いどうぞ〜」そう私が言うとガチャっととドアが開いた。
「あ、先輩!」そこに立っていたのは会社の後輩の稀崎蒼だった。
「お、蒼どうしたんだ?」
「実は、最近私の家で奇妙な出来事が起こるようになって…」
「奇妙な事?」
「はい…実は夜中に電話が掛かってきて電話を取ると無言で…小さな声で何が言ってるんですけど聞き取れなくて、それが気味が悪くて…」
蒼の話に少し驚いたが、すぐに冷静になり、
「それで、俺に?」
「はい、先輩のご友人の方に心霊などに詳しい方が居ると前におっしゃっていたので…」
「あ、あぁ、神崎のことか。それなら電話でもよかったんじゃないか?なんでわざわざ…」
そういうと、蒼は恥ずかしそうに
「実はもう一つお願いがあって…家にいるのが怖くて、よかったら先輩の家に泊めてくれませんか?」私は、急なお願いに頭がポカーンとする。
「あ、あぁわかった狭いけど良いか?」私はあまりよく考えずにOKを出す。
「ありがとうございます!」そうして私は蒼を家に泊めることとなった。
「ん〜神崎のやつ電話出るかな」私自身も彼の存在をすっかり忘れていた。とりあえず電話をかけてみる。
トゥルルルトゥルルル
「はい、もしもし?」
「あ、神崎?」
「その声、弘賢か?」
「YES」
「どーしたんだ?お前から掛けてくるなんて珍しいな」
「それが、…」私は蒼の事と、私が体験した話を全て話した。
「なるほど、謎の電話、それに弘賢が見た怖い夢と襲われた話…」
「もしかして、住んでいる家が事故物件だったりしないか?家賃が妙に安いとかない?」
「いや?この辺りの相場と同じくらいだよ」
「とりあえず、明日暇か?駅前のカフェで詳しく話を聞かせてくれ、その後輩さんも連れて」
「あぁ、明日は特に何もないから大丈夫だ」
「なら、決まりだな。じゃあ13時ごろにカフェで」
「了解」そう言い私は電話を切った。そして蒼に話しかける。
「なぁ、蒼は明日予定とかあるか?」
「特にないです!」
「なら明日、例の神崎に会うんだが一緒に来てくれるか?」
「わかりました!」
なんだか妙に元気だな。何かいいことでもあったのか?そう思いつつ、夕飯を作ろうとキッチンに向かうと
「あ、私も手伝います!」そういって蒼もついてくる。
「大丈夫だぞ、それに客人に手伝わせるのもあれだし」
「泊めてもらうんですから、それくらいやります!」
「それじゃ、じゃがいも切ってくれない?」
「わかりました!」そうして料理を作り、食卓に並べている時でした。
トゥルルルルトゥルルル
「電話か…」電話とる
「……」
「またか…」
「……けて」
「…たすけて…」
ガチャ 私は何も言わずそのまま電話を切った。
「今の電話誰だったんですか?」
「イタズラ電話だね。最近多いんだ」
「もしかして…私の家に来てたのと同じ…」
「気にしなくて大丈夫だよ。心霊とかって大半は想像とか作り話だから」
「そう言うものですか…」蒼は少し不安げな表情をしていたが、その日はそれ以降何もなく終わった。
「ここのカフェだね。」私たちは昨日神崎と会う約束をしていたカフェに来ていた。
「お、弘賢やっと来たか」そう言って神崎は座っていた席を立ちこちらに歩いてきた。
「久しぶりだね、神崎」
「この子が言ってた後輩?」
「あ、初めまして。弘賢先輩の後輩の西宮蒼と言います。今日はよろしくお願いします。」
「よろしくね」軽く挨拶を済ませ、席に着く。
「それで、昨日電話で言ってた現象、もう一度聞かせてくれないか?」そう言うと神崎はノートとペンを取り出した。
「えっと…」昨日あったことも含め、これまであったことを全て話した。
「なるほど、つまり2ヶ月前に仕事から帰ると家に誰か居て、それを空き巣だと思い、家に入ると家の中には誰も居なくて、ライトをつけようとした時に襲われたと…」
「その時に出来たあざ見せてくれないか?」
「あぁ」そう言って私は頭のあざを見せる。
「!?これは…」神崎は驚いた表情をする。そして蒼もあざをみると「ひっ!?」何かに驚いている。
「どうした?なんかあるのか?」そう言うと神崎はパシャリと写真を一枚とり、見せてきた。
「は!?何これ…気持ち悪」その写真に写っていたのは子供の手くらいの手形だった。
「なんだよこれ…」私がそのあざを見ていると神崎が「これは…相当やばいな」そう言ってスマホで一つのサイトを開き、見せてきた。
「このサイトを見てほしいのだが」見せられたサイトにはこう書かれていた。
「頭に子供の手形のような形のあざがある場合、霊に呪われている可能性が高いです。
その現象が起きると最悪、3ヶ月後には死にます。なので、早めにお祓いを受けることお勧め致します。」と書かれていた。
「とりあえずお祓いを受けた方が良さそうだな」
そう言うと神崎が
「それもそうなんだが、この下の所を読んでくれ」そう言い画面をスワイプする。
「通常電話が掛かって来ない時間帯、夜中などに無言電話がかかってくる。その電話で助けてと助けを求められる。などと言った現象が起きた場合はすぐにその家を引っ越すことをおすすめします。その家は呪われている可能性があるからです。よく、不審死を遂げる方がおりますが、そう言う方は亡くなる前に上記のような現象が起こっている場合がほとんどです。」
この記事を読んだ瞬間、背筋がゾッとした。
「引っ越した方がいいかもな」神崎はポツリと呟いた。私はふと隣に座っていた蒼の方をみると
私の袖を掴み、小刻みに震えていた。
「蒼?大丈夫か?」私がそう聞くと
「先輩…すいません…私怖くて…」私は蒼の頭を優しく撫でる。
「引っ越せばどうにかなるんだろう?だったら引っ越せばいい話だよ」私がそう言うと
「私…あまりお金なくて…」
「なら、私の家に住むか?」
「え…いいんですか?」
「私は構わないよ」
「じゃあ…お言葉に甘えさせていただきます」
そうしてその日は解散となり、帰りがけに不動産屋に寄ることにした。
「なるべく、近くで新しい部屋ってありますかね?」
「少しお値段がかかってしまうのですが、築2年のこちらのマンションなどはどうでしょうか」
「なら、ここにします。」
そうして引っ越し先も決まり、引っ越し作業をしていると
「なんだ…これ」引っ越しをするために家の家具や私物を段ボールに詰めている時だった。
壁紙の一部が剥がれてその下に下に大量のお札のようなものが貼られているのが見えた。
私はそれを見なかったことにして作業を続けた。
「よし、これを運んで終わりだな」そうして新居へと引っ越した。
それ以降は何もなく、やがて蒼と私は結婚し子供も生まれ今では幸せに暮らしている。
私が元暮らしていた家がどうなったかはわからない。しかし、私は心霊や都市伝説を信じていない、信じたくないのだ。そして、あの場所で何があったのか、今となってはもうどうでもいい話だ。
#第二章「オカルトマニア」
「なぁ皆川〜このブログの話めっちゃ面白くね?」
「どう言う話?」
「なんか、とあるアパートの一室で投稿者が心霊現象に悩まされるんだけど、引っ越したら全部解決したって話」
「どうせ作り話だろ」そう言って僕は本棚にあった2chの怖い話をまとめたノートを手に取った。
「でもさ〜このアパート調べたら、このすぐ近くなんだよね」そういい山北はスマホでそのアパートの場所が示されたマップを見せてきた。
「マジで、近所じゃん…てか、ここ僕の住んでるアパートじゃねぇか!」どうやらそのブログに書いてある体験談が起きた場所は僕のアパートのようだ。
「まじ?なんか最近変わった事とかない?」
「そういえば、下の階の西村さんが最近引っ越したんだけど、何も言わずに引っ越しちゃったんだよね」
「へぇ…もしかしてその人ってこのブログ書いた人なんじゃない?その西村さんの下の名前わかる?」
「めちゃくちゃいい人で飯とかもご馳走になった事あるし、わかるけど…確か弘賢さんだったかな」
「お!ブログに出てくる体験者の名前と一緒じゃん!」
「でも、普通ブログとかネットに自分の本名出すか?」
「下の名前だけとか、苗字だけならよくあるんじゃない?」
「まぁそうか」
「その人の電話番号とか知らないの?携帯の」
「あ〜多分スマホに入ってるかも」そう言い僕はスマホを取り出し、西村さんの電話番号を探す。
「あ、あったわ」
「お!じゃあその電話に掛けてみようぜ!」
「お前なぁ、西村さんだって忙しいんだぞ?」
「掛けてみて、出なかったらそれでいいからさ
とりあえず掛けてみよ?」
「ったくしょうがねぇな」少しめんどくさいと感じたが、とりあえず掛けてみることにした。
トゥルルルトゥルルル
「はい、西村です。」
「あ、もしもしどうも、皆川です。」
「皆川くんか!久しぶりだね」
「お久しぶりです。」
「どうしたんだい?私に何かようかな」
「あ、そのことなんですけど、前まで米川荘の21号室に住んでたじゃないですか。なんで急に引っ越しちゃったのかなって」
「あぁ…そのことか」西村さんの声が少し暗くなる
「何かあったんですか?」
「実はあそこに住んでる時に奇妙な事が起きてね」
「奇妙?」
「そうなんだよ。夜中に無言電話が掛かってきたりとか、鍵も空いてないのに家の中に誰か居たりとか」
「あ、もしかして西村さんってその事ブログに書いてます?」
「うん、体験談を他の人にも共有したくてね」
「なるほど」
「もしかしてブログ見つけちゃった?」
「僕が見つけたわけじゃないんですけど友人が」
「なるほどね」
「それが原因で引っ越したんですね」
「そうだけど、やっぱりあの部屋のこと気になる?」
「えぇまぁオカルト好きですから。」
「実はまだあの部屋借りてるんだよね。」
「え!?本当ですか!」
「もし君たちが調べたいなら、使ってもいいけど…」
「ぜひ!使わせてください!」
「わかった鍵はポストの中に入ってるから」
「ありがとうございます!」
「じゃあまた、ご飯でも行こう」
「はい!ぜひ!では失礼します。」
そして電話を切ると、
「皆川〜なんだって?」
「調べたいなら別に使ってもいいってさ」
「まじ?よっしゃじゃあ行こうぜ!」
「おいおい、今日行くのかよ」
「当たり前じゃん!善は急げって言うし!」
「全然、善ではないけどな」
「細かいことは気にすんな!荷物持って行こうぜ!」そうして僕と山北は例のアパートへむかった。
「ここか!えっと21号室は…ここか!」そして21号室の鍵を開け、中に入る。
「なんか、ここ空気悪いって言うか、気味悪いな」
「心霊現象が起きるんだし、それくらい当たり前だろ」そう言いつつ荷物を置く
「で、今日泊まんの?」
「心霊現象が起きるのは大体夜だし、泊まるよ」
「俺は自分の部屋戻るからな」
「え〜一緒に居ようよ」
「嫌だね。」そう言って立ち上がると
「ちょ、ちょまじで頼むって!」北山が俺のズボンを引っ張ってくる。
「1人でいても別に問題ないって」
「精神的な問題だよ!」
「はぁ…仕方ねぇな、今日だけだぞ」
「ありがとう!」
そうしてそれぞれスマホをいじり、夜まで時間を潰した。
「夜飯どうする?」
「コンビニで買ってくるか?」その時
トゥルルルルトゥルルルルル
「電話?誰だろう」
「とりあえず取るわ」
ガチャ
「はい、もしもし?」
「………」
「あの…?何か御用ですか?」
「……けて…」
「はい?」
「……たすけて…」
ブツツーツー
「なんだ今の電話?」
「誰からだった?」
「わからん、なんかたすけてって」
「それ、西村さんが言ってた電話じゃね?」
「まさか、そんなわけ…」そう言いかけた瞬間
部屋の電気が消える
「は!?なんだ、急に電気が…」
「とりあえず電気つけろ!電気!」
「わかった」そうして電気をつけようと振り向く
「ひぃ!うぁぁぁぁぁ!!!」
「どうした!?は、うぁ!」
驚きのあまり尻餅をついてしまった。
「誰だ!」
「……」
「……助けてっていたよね!!!!!」
「ひぃ!こっちに来るな!」
「あははははははははははははははははははは」
「おい!皆川!こっちだ来い!」
「体がうごかねぇんだ!」
「何してんだ!」そうして北山に引っ張られ、急いで部屋を出る。
「はぁ…はぁ…何だったんだ今の」
「わからねぇ…でも西村の言ってた霊ってあいつのことなんじゃないか?」
「とりあえず、ここにいたらまたいつ出てくるかわからねぇ、一旦俺ん家いくぞ!」
そうして北山の家に避難することになった。
「霊ってあんなにはっきり見えるものなのか?心霊写真とかだと、体の一部とかそんなとこしか映らねでけど」
「わからねぇが、実際に体験した人の多くははっきり見えたって聞くよな」
「マジで怖かったトラウマになりそう…」
「とりあえず、明日日中置いてきた荷物取りに行くぞ」
「うわ…またあそこ行かなきゃいけねぇのか…」
「仕方ないだろ、荷物全部置いて出てきちまったんだから」
「あ、そうだ」ふと僕はあることを思い出し、ポケットからスマホを取り出した。
「どうした?」
「一回、さっき起きたことをまとめようと思って」
「なら、俺ノートパソコン持ってるから貸そうか?」
「あぁ、助かるよ」そして僕は北山から借りたパソコンで今日あった出来事をまとめることにした。
「まぁ一通り書いたし、こんなもんでいいか」
「お、書き終わった?」
「あぁ、どうせだし今日のこと深く考えないようにパーっとやろうぜ!」
「いいなそれ!」
「じゃあコンビニ行くか」そうして、2人でコンビニに買い出しに行くことにした。
「やっぱ夏の夜って暑いなぁ」
「日落ちてるんだから、涼しくてもいいのにな」
「まぁ、そんなんに文句言っても変わらないけどな」
「そうだな」雑談をしながらコンビニに向かっている時だった。
「お、おいあれ…」電柱の脇に誰かが立っているのが見えた。
「うわマジか…ホラー映画とかでよくある定番じゃねぇか」
「んなこと言ってる場合か!別のルートで行くぞ」そういうと北山は急ぎ足で別ルートを歩いていく。
「ったく、どこまで追ってくるんだよ」
「は?」
「後ろ、ずっと移動して追いかけて来てんだよ」
「くそ!ちょっと走るぞ!」
「はぁ、だるっておい!置いてくな!」僕は北山を必死に追いかける。
「はぁ…はぁ…ついた…結構遠回りしたな…」
「仕方ねぇだろ…いるんだから」2人とも走ったせいで息が上がっていた。
「完全に俺ら狙われてるな…これ」
「だろうな…どうする」
「どうするって…とりあえず朝まで耐えれば、山田と坂口も来てくれる」
「呼んだのか?」
「流石に2人じゃ危なすぎる」
「だからって…」
「言いたいことはわかる。でもな、もしかしたら俺たち死ぬかもしれないんだぞ」
「…」
「とりあえずは、夜が明けるまでが勝負だ。」
「勝負って言ったってどうすればとりあえず人通りの多いところに行けば追ってこれないかもしれない」
「じゃあ大通りに出るのか」
「あぁ」
「でもどうする、大通りに行く前に追いつかれればおしまいだぞ」
「それは気合いで乗り切るしかない、今の段階ではあいつをどうにもできない」
「ところで今何時だ?」北山にそう聞かれ僕はスマホの時刻を見る。
「午前4時だな」
「あと1時間くらい耐えれば日が上り始める、
そうすれば、俺たちが有利になる」
「じゃあ1時間逃げ続けるのか?」
「俺にいい案がある」そうして2人でコンビニを出て大通りに向かって走り始めた。
「後ろいるか?」
「あぁどんどん近づいて来てる」
「なら、さっき言った通りあいつに向かってお札を投げろ!」
「おう!」そして僕は霊に向かってお札が貼られた木の板を投げた。
「どうだ!?」後ろを振り返ると霊は苦しそうに悶えている
「よし!このまま大通りに出るぞ!」
「了解」
そして2人は大通りへと出た。まだ4:30のため人はあまりいないがそれでも店の開店準備のために多少は人がいる。
「よし!あと30分だ!」2人の元に一台の車が向かってくる
「おい!2人共!早く乗れ!」その運転手は大学の友人、坂口であった。
2人は急いで車に乗り込む。
「助かったぜ、ありがとな」
「いや困ってるなら助けるのが友達だろ」
「いいこと言うなぁ」そう感心していると
「うわ!」ものすごい衝撃のあと僕の意識は途切れた。
「あれ…ここは?」あたりを見渡すが見慣れない
部屋だった。
「お、起きたか…」声の方向を見ると坂口が頭に包帯をした状態でベットに座っていた。
「お、おい、何があったんだ!?」そう声を出した瞬間、喉に激痛が走る。
「痛てて…」
「無理すんな…実はあの時、道路に急に女性が出て来てそれを避けようとして電柱にぶつかったんだ」
「そんなことが…後ろばっかりみててきずかなかった…それより、北山は!?」部屋を見渡すが4つのベットのうち2人しかいない
「北山は…助からなかった…俺のせいだ…もうちょっと注意していれば…」
「そうか…北山…坂口が悪いわけじゃない元はと言えばあの部屋に関わった俺たちが悪かったんだ…」
「…そういえば、事故る直前変なのを見たんだ…」
「変なの?」
「あぁ、北山の足元を手みたいものが掴んでたんだ…」その時僕はものすごい寒気に襲われた,
次は自分の番かもしれない…そう思うと正気ではいられなかった。
「おい、すごい顔色悪いぞ?大丈夫か?今、ナース読んでやるから」そういうと坂口はナースコールのボタンを押す。
するとすぐに看護師が部屋に入って来た。
「大丈夫ですか!?」
「俺は大丈夫なんですけど、こいつが…」
「皆川さん大丈夫ですか?どこか痛みますか?」
そういって僕の顔を覗き込む看護師の横にあの女が笑ってこちらを見ていた。
#第三章「調査」
事故から2週間後、僕と坂口は傷は完治していないものの、だいぶ動けるようになっていた。
「この調子ですと、来週あたりには退院できるかと思います。しかし、皆川さんは喉に損傷を負っているため、退院後も定期的に受診してください。」医師の診断を終え、病室に戻ると西村さんが見舞いに来ていた。
「あ、皆川くん、事故に遭ったって聞いて心配したよ…」
「西村さん…わざわざお見舞いに来てくださりありがとうございます。」
「いやいや別に感謝されることでもないよ。怪我の方は大丈夫なのかい?」
「えぇ、だいぶ回復して来ていて来週あたりには退院できるそうです。」
「なら、よかった。ところで例の部屋の件だけど…何かあったのかい?」
「すいません…僕の口からは言いたくないんです…代わりにこれを見てください。あの日起きたことをまとめたものです。」そう言って僕は西村さんに北山のパソコンから転送していたものを見せた。
「なるほど…こんなことがあったのか…」
「西村さんが言っていたものと大体は一緒だったのですけど…」
「?他にも何かあったのかい?」
「追いかけられたんです。霊に…」
「それは本当かい!?」
「はい…」
「知り合いのお坊さんがいるんだがすぐにお祓いをしてもらったほうがいい、このままでは君の身があぶない」
「わかりました…退院したらすぐにお祓いしてもらいます。」
「この紙にお寺の場所と電話番号を書いておくから」
「ありがとうございます。」
「それじゃあ私はそろそろいくね」
「元気になったらうちにも遊びにおいでね」
「はい、その時はよろしくお願いします。」
「じゃあさようなら」そう言って西村さんは病室を出て行った。
「なぁ皆川、お前…あの日何があったんだ?」
「やめてくれ、思い出したくないんだ」
「お前が答えたくないなら言わなくていいんだけど、お祓いの時俺も行くからな、俺も被害に遭ってるわけだし」
「まぁそれはいいよ」そうして退院の日がやって来た。
「退院おめでとうございます。今日までよくがんばりましたね」
「ありがとうございます。お世話になりました。」
「では、次の診察は2週間後ですのでお忘れ無く」
「はいわかりました」僕は軽くお辞儀をして、病院を後にした。
「えっとここの道を右か」病院を出た後、僕たち2人は西村さんに教えてもらったお寺へと向かっていた。
「あ、ここか、随分と立派だな」
「そうだな」2人で感心していると住職らしき人が出て来た。
「これはこれは、遠くからわざわざ御足労いただきありがとうございます。私、こちらで住職をやっています篠崎と申します。」
「あ、どうも、お電話させていただいた皆川です。今日はよろしくお願いいたします。」
「えっと私は、皆川の友人の坂口といいます。一緒にお祓いをしてもらいたくて来ました」
「そうでしたか、立ち話もあれですしどうぞ中へ」そうして住職の篠崎さんに案内され仏壇のある大きな部屋へと通された。
「さて、お祓いということでしたがあなた方2人の後ろを先ほどからついて来ている女性のことですね?」
「え?」
「振り向かないで下さい。その霊はかなり危険です」
「わ、わかりました」
「お祓いをする前に皆川さん、あなたに忠告しなければなりません。ここでお祓いをしたからと言って霊障が治るわけではないのです。
そして、一番最悪の場合あなた自身ではなく周りの方に害が及ぶ可能性があります。」
「な、なるほど…」
「西村さんから、お聞きしましたがあなたはどうやら心霊現象や都市伝説についてお好きとのことでしたが、今回の件身をもって分かったと思いますが、面白半分では絶対にそういう場所に行っては行けないのです」
「はい…十分反省しています」
「以後気をつけてくださいね」
「話が長くなってしまいましたがお祓いの儀を始めさせていただきます」
「お願いします。」
「儀式中の注意なのですが、何があっても目を開けないで下さい。そして合掌をし続けてください」
「「わかりました」」そうして篠崎さんはお祓いを始めた。
何を唱えているのかは聞き取れないが
「おい!皆川!こっちだこっちを見てくれ」
北山の声がしたが、篠崎さんに言われた通り目を開けない
そうして何分が経ったのだろうか、次第に周りに聞こえる声は多くなっていき、女の悲鳴のようなものが聞こえる
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」僕は絶対に目を開けまいとぎゅっと強く手を合わせる。
「以上でお祓いは終わりです」そう篠崎さんが言うと2人は目を開ける
「え、何これ…」あたりを見渡すと盛り塩のようなものが黒く変色していた。
「そこまで心配しなくても大丈夫ですよ、霊は祓いましたから」ふと隣を見ると坂口は、疲れているように見えた。
「おい…坂口大丈夫か?」
「あぁ…それにしてもすごかったな…声」
「声?北山の声とかか?」
「それだけじゃないだろ…40人くらいの声がしてたぞ」
「そんなに?あんま聞こえなかった」そんな会話をしていると、篠崎さんが
「お2人方、これから先は私でもどうにも出来ない領域です、お気をつけて…」
「はい、覚悟はできてます」
そうして、僕と坂口はお寺を出て帰路に着くことになった。それからしばらくして
トゥルルルルトゥルルルル
「電話?誰だろ」ガチャ
「もしもし?」
「もしもし!?亮平!?」
「姉さん?どうしたの?」
「お母さんとお父さんが…」
「え?2人がどうしたの?」
「交通事故で亡くなったって…」
「は?…」
「私…もうどうすればいいかわからなくて…」
「と、とりあえず、今から実家に戻るから!」
「うん…」
「じゃあ向かうから」そうして、僕は急いで荷物をまとめ、実家へと向かった。
実家へ到着すると、叔母や祖母、親戚の人が家にいた。
「亮平!」そう言って駆け寄って来たのは姉だった。
「姉さん…」
「本当に無事でよかった…」姉さんは泣いていた。
「ど、どうしたの?」あわてふためく、僕を見て姉さんの後ろにいた、叔母さんが口を開く
「亮平ちゃんが事故に遭ったって聞いてみゆちゃんねぇ、ものすごく心配してたのよ、でもそのすぐ後に母親と父親が交通事故で亡くなって…」
「そうだったのか、姉さん心配かけてごめん」
「別にいいのよ…亮平が無事なら…」
「それでね…まだこっちまで情報回って来てないと思うんだけど…翔太が亡くなった…」
「…!?翔ちゃんが!?」その話を後ろで聞いていた近所の人達も驚きを隠せないようだった。
僕と翔太はいつも一緒で、どこに行っても2人だった。しかし高校を卒業した後、翔太の両親が他界、大学生になったばかりの翔太は少しの間、部屋に引き篭もるようになった。そんな時に翔太と一緒にオカルトにハマった。この先もずっと一緒、そう思っていたが先日の事故で翔太は亡くなった。
「それは辛かったでしょう…」祖母が俺の頭を撫でる
「ばあちゃん…」
「とりあえず、お父さんとお母さんにお線香をあげなさい」ばあちゃんは僕が落ち着くとそう言った。
そして、棺の側まで行くと僕は絶句した
その棺の中には包帯がぐるぐる巻きで、もはや顔さえ見えない状態であった。
「母さん…父さん…」僕は溢れそうになる涙を必死に抑え、線香をあげた。
その時、篠崎さんの言っていた言葉が頭をよぎる
「まだ終わりじゃない…」まだこれが終わりではないと理解した。
その頃、篠崎は西村と電話をしていた。
「お久しぶりですね、西村さん」
「えぇお久しぶりです。」
「ところで、皆川さんのことなんですけど」
「はい?皆川くんがどうかしましたか?」
「少し言いづらいのですが…彼…」
「はい?」
「これから一番悲惨な運命が待ち受けていると思います」
「悲惨な運命?」
「えぇ、西村さんは呪いや祟りなどはわかりますか?」
「えぇ、もちろん」
「その中で一番怖いものってなんだと思います?」
「えっと…自分が死ぬとかですか?」
「いいえ違います…自分に被害がなく周りの人が被害に遭うことです」
「それは…何故?」
「いいですか?もし、自分以外の周りの親しかった人間や家族が次々と亡くなっていくとします。そうするとその取り残された人は精神的に追い込まれます。そして最悪の場合自殺…それが祟りの一番恐ろしいところです」
「つまり皆川くんは今その状態ということですか?」
「はい…彼はこれから起きる悲劇に耐えなくてはなりません…辛いことでしょう…」
「でも、それってあくまで可能性のはなしですよね…?」
「えぇ…ですが、祓った時あの霊は許さないと言っていました…なのでそうなる可能性がすごく高いんです」
「そんな…死者が住まう場所に面白半分で近づく…そんなこと絶対にあっては行けません」
「…あの時、許可を出したのは私です…これは私の責任です…」
「例えそうだとしても、彼は霊に憑かれてしまった、これは紛れもない事実です」
「でも、それなら何故私は祟られなかったのでしょうか…」
「それは…あなたは、霊がいると知らずに過ごしていた。それに西村さんは霊などを信じていないそれがあなたを守ったんです」
「そうだったんですか…」
「ですから、あなたは祟りの対象から外れていますなので、皆川さんの近くにいてあげて下さい、それが彼にとってのこころの支えになるはずですから」
「わかりました。急遽電話してすいませんでした」
「いえいえ、大丈夫ですよ、それではまたの機会に」
「えぇ、それでは」そして電話を切る。
「とりあえず皆川くんに電話してみようかな」
そうして私は皆川くんに電話をかけた
「あ、もしもし?皆川くん?」
「…はい…」
「どうしたんだい?元気がないようだけれど…」
「母と父が亡くなりました…」
「え?」
「交通事故だったそうです。急に飛び出して来た子供を避けようとして、対向車線のトラックに衝突したそうです」
「そんな…もうすでに…」
「……?」
「と、とりあえず、今どこにいるんだい?」
「葬式を終えて今家に戻って来たところです」
「今から、そっちに向かうから、出かける準備をしていてくれ」
「わかりました」
「じゃあまた後で」そうして私は電話を切った
「入院していた時ぶりだね、皆川くん」
「はい、あの時は大変お世話になりました」
「まぁ、外で話すのもあれだし、車に乗って」
「わかりました」
そうして、僕は西村さんの車に乗る
「さっき、電話で篠崎さんと話したんだが…」
「祟りのことですよね」
「知ってたのか」
「えぇ、だからこれから、僕はその現実に耐えなきゃ行けない」
「そうだね…でも一つ言われたことがあるんだけど、私はどうやら祟りの影響を受けないらしいんだ」
「え?」
「霊を信じていないから影響を受けにくいらしい」
「なるほど」
「ところで、あの部屋のことまだ気になってるんだろ?」
「はい…近寄らないのが身のためとは言われましたが」
「なら、近寄らずに調査をすればいいんじゃないかな」
「どういうことですか?」
「ああ言うのって過去に何かあったりするんだろ?」
「えぇ、事故物件と言われる場所ですね」
「なら、過去に何があったのか聞くのがいいんじゃないか?」
「なるほど…でも、そう言うの知ってる人って…」
「大家さんだよ」
「あ!」
「大家さんに聞くのが一番早いんだよ」
「でも、大家さんって確かあのアパートには住んでないですよね?」
「あぁ」
「僕、大家さんがどこに住んでるとか知りませんよ?」
「それに関しては大丈夫だよ、私が大家さんの家は知ってる」
「本当ですか!?」
「うん、大家さんも随分なお婆さんでね、孫とかも離れたところに住んでいて、寂しいらしいんだ、それでよく話し相手になってたんだけど」
「なら、今向かってるのって」
「大家さんの家だよ」
「事前に電話をして訳は話してるから」
「なるほど」
「あ、もうそろそろつくよ」西村さんがそういうと、とある一軒家に着いた。
「随分と年季が入ったお家ですね…」
「まぁ築50年以上経ってるからね」そう話していると玄関から1人のお婆さんがでてきた
「あら?弘賢ちゃん、来たのね」
「お久しぶりです。笠松さん」
「あ、31号室の皆川です」
「あらあら、若い人たちがいっぱい来てくれて嬉しいねぇ」
そう言って笠原さんは僕たち2人を家の中へ案内してくれた
「それで21号室のことを聞きたいんだってね」
「はい、過去にあの部屋で何があったのか教えてください」
「少し、待ってね」そう言って笠原さんは一枚の新聞記事を切り取ったものを見せてくれた。
「もう30年も前になるのかしらねぇ…あの部屋で殺人事件が起きたの、被害者はその時21号室に住んでいた、西谷陽子ちゃん、私は陽子ちゃんって呼んでいたわ、とても愛想が良くてねぇ…いい子だった」
「なるほど…その陽子さんは何故殺されてしまったんですか?」
「陽子ちゃんはねぇ…すごく美人さんでね、いろんな人に好かれていたのよ…そんな時、あの事件が起きたわ…陽子ちゃんに恋をしていた当時の大学生の子がね、陽子ちゃんを襲って殺してしまったの」
「えぇ…好きならちゃんと伝えればよかったのに…」
「本当はそれがいいんだろうけど…陽子ちゃんはねぇ、子供の頃に父親から虐待を受けていてどうしても男の人が苦手だったのよ…」
「なるほど…」
「それで事件が起きてから数年後だったかしら、その時新しく入居して来た山西さんって人がね変死体で見つかったの」
「それで、私、怖くなっちゃって、お世話になってた、お寺の住職さんにお祓いをお願いしたのでも、お祓いをしてもらった後も不気味なことが続いて、やがてあの部屋には誰も住まなくなったの、それから10年経った頃かしらねぇ
弘賢ちゃんがあそこの部屋に引っ越して来たのは」
「そうだったんですね」そうして西村さんが話し始める
「最初は、霊とか信じてないし家賃が安いからってあの部屋に決めたんだ、その時笠原さんにも止められたんだけど、ここら辺であれほど条件のいい部屋はなくてね」
「それであの部屋に入居したと…」
「住み始めてしばらくは何もなかったんだけど、2年が経ったくらいの時に例の現象が起きるようになって…でも、一つだけ不可解なことがあったんだ」
「不可解なこと?」
「あぁ、当時会社の後輩だった西宮蒼という女性つまり、今の妻が夜中に変な電話がかかってくると言って私の家に逃げて来たんだ」
「え、でも事件が起きたのは21号室だから、蒼さんの家には関係ないんじゃ…」
「そうなんだよ、それが疑問になって蒼が元々住んでいた部屋について調べたんだが、築浅で、別に事件が起きたわけでもない…まぁその時は結婚や出産など忙しくて結局わからないままだったんだが」
「もしかして、ですけど…」
「ん?何が思い当たる節でもあるのかい?」
「僕の憶測ですけど、僕らがあの部屋に泊まった日、避難していた友人の家にもあの電話がかかって来たんです」
「なるほど…」
「なのでもしかしたら、関係がある人のところにあの電話がかかってくるんじゃないのかなって」
「もし、仮にそうだとしてなんで蒼だったんだろう…」
「それは…もしかしたら蒼さんが西村さんに恋をしていたから…とか?」
「うぅん…どうなんだろう…」
「とりあえず、21号室のことがわかったので大きな収穫です」
「そうだね」
「笠原さん今日はありがとうございました」
「あら、帰っちゃうのね、あ、そうだ、これよかったら持ってて」そう言って笠原さんは一つの紙袋を持って来た。
「お菓子なんだけど、歳でクッキーとか食べれないのよ、よかったら食べて」
「「ありがとうございます」」
そうして、僕たちは笠原さんの家を後にするのだった。
「とりあえず、あの部屋が事故物件なのは確定しましたね」
「そうだね、それがわかっただけで大きな収穫だけど、何か他に気になることでもあるのかい?」
「殺人事件が起きた。この部屋で人が殺されたって言うのだけで、気味は悪いですけど 何故あそこまでその陽子さんは人に危害を加えているのでしょうか、通常ならその犯人だけ恨むはずですけど」
「うーん、私が思うに推測だけど、もしかしたら、自分が殺されて自分は幸せになれなかった、だから幸せに暮らしている人を祟るのかもね」
「なるほど…」
「そういえば一つだけ言い忘れていたことがあったんだけど、部屋に入った時壁紙の一部が剥がれてなかったかい?」
「え?僕たちが泊まった時はそんなところなかったですよ?」
「!?貼り直したりしてないからあのままになってたはずなんだけど…」
「その壁紙の裏に何かあったんですか?」
「そうなんだよ、あの壁紙の裏に壁一面に大量のお札が貼ってあって」
「お札?」
「よく覚えてないんだけど、あれは確かにお札だったと思うよ」
「謎のお札か…事故物件ではよくあることですけどそれでも貼られているのは1枚か2枚…」
「あのお札はなんだったんだろうか」
トゥルルルルトゥルルル
「あ、電話だ」私は西村さんに確認して電話に出た。
「もしもし?皆川ですけど」
「あ、こちら〇〇警察署の斉藤と申します。」
「警察?警察が何か僕に御用でしょうか?」
「えっと大変いいにくいのですが…」
「はい?」
「お姉さんが自宅付近のやで変死体で発見されました」
「え?」
「死因は現在調査中ですが、遺体の損傷が激しく、皆川美優さんだと言うところまでは、わかったのですが、死因がまだはっきりして居ません。一度○○署までおいで下さい」
「わかりました…」
「それでは失礼します」そうして僕は電話を切った
「どうした?」西村さんが心配そうにこちらを見ている
「今、○○署から電話が来て、姉が変死体で発見されたそうです…」
「!?」
「それで○○署まで来てほしいと」
「わかった今から向かうね」そう言って西村さんと僕は○○署へ向かった。着くと入り口には、先ほど電話をくれた斉藤さんが待って居た。
「わざわざ御足労いただきありがとうございます。」
「いえ、それで姉は」
「遺体安置室にご遺体はあります。かなりひどい状態ですので、体調を悪くされるかもしれません…見ますか?」
「はい、覚悟はできて居ます」
「では、お連れの方はこちらでお待ちください」
そう言って西村さんを残し、斉藤さんと2人で遺体安置室へと向かった
「これは…ぅ…」入るとそこには姉であったであろう遺体があり、喉を掻きむしったのだろうか、喉に爪を立てた状態で顔は姉と判別できないくらい爛れて居た。
「大丈夫ですか?気分が悪いようでしたら出ましょう」僕は斉藤さんにそう言われて遺体安置室を出た。
「では、色々と確認しなければならないのでこちらの部屋にどうぞ」その後、最後に会った時姉がどう言う状態であったか、姉の交友関係について聞かれた。そして警察署を出る頃にはすっかり日が落ちていた。
「お待たせしてしまってすいません」
「いや、大丈夫だよ」そうして西村さんの車に乗る
「しかし、こう言うことが起きたあとだから皆川くんを1人にするって言うのもあれなんだけど…」
「今日は家に帰らず、ビジネスホテルに泊まることにします」
「そうか、その方がいいね」そうして西村さんにホテルまで送ってもらい
「じゃあまた明日、9時ごろに迎えにくるよ」
「了解です。今日はありがとうございました」
「ゆっくり休んでね」そう言って西村さんは帰って行った。僕はホテルのチェックインを済ませ、部屋でパソコンをいじっていた。
「今日聞いた事をまとめて…」これまであった出来事をまとめることにしてパソコンを操作しているとある違和感を感じた。
#第四章「真実」
「あれ…これって…」自分がまとめたものを確認しているとある部分で目が止まった
「大量のお札があったが、僕たちが泊まったときには無くなっていた…誰かが西村さんが引っ越した6月から僕たちが泊まった8月の間に剥がしたのか?」しかし、鍵は掛かっていて窓も割られてない、ならやったのは霊か?その時電話が鳴ったどうやら西村さんのようだ
トゥルルルトゥルルルル
「はい皆川です」
「あ、皆川くん?」
「どうしました?」
「実は気づいたことがあって、住んでいた時に部屋に落ちていた紙が何故か私の机の引き出しの中に入っていて気になって広げてみたんだ、
そしたら、「お前だけは絶対に許さない」って赤い文字はっきりと書いてあって…」
「それは…怖いですね…」
「そうなんだけど、その紙が落ちてたのって私が入居して1年経った頃なんだ」
「え?」
「つまり入居してから1年後に書かれたことになるんだ」
「もし、私が入居する前から落ちていたなら約10年間放置されていたことになる、でも笠原さんが定期的に空き部屋を掃除しているし、
そもそもそんなに放置されてたなら文字が薄くなってると思うんだけど」
「確かにそうですね」
「でも、幽霊って物理的に文字を書いたりできるのか?」
「多分できないと思います…」
「しかも、血で書かれているとかではなく赤いボールペンで書かれてたんだ」
「じゃあ誰かが意図的に?何のために?」
「誰か人の仕業なのは確かだろう。でも、何のためにかはわからない。ここからは私の推察なのですが、もしこの部屋に誰かが住み着いてたとすると、入居者に存在がバレたくない。だから幽霊だと思わせて早く出て行かせるため、そしてもし万が一自分の正体を見られた場合は入居人を殺害する」
「なるほど…それなら確かにあり得ますね。でも、僕と友人が追いかけられたことや事故にあったこと、そして僕の両親や姉の突然の死についてはどうなるんですか」
「あくまで憶測の話だよ、根拠はないよ」
「すいません…」
「でもそうだね、じゃあ何故君の周りの人間が次々と亡くなるのか」
「謎ですね…あ、そうだ西村さんにお聞きしたいことがあったんですがいいですか?」
「何だい?」
「21号室に引っ越してから僕たちが泊まるまでの数年間の内にあの部屋に入りましたか?」
「いや、入ってないな…もしかしてお札の話かい?」
「はい、やはり幽霊が壁紙を治すとは考えずらいんですよね」
「だよね…」
「は…まさか!?」
「どうした!?」
「もしかしたら誰かが住み着いているのは確かかもしれません!」
「さっきそれ否定してなかった?」
「ですが、もしあの部屋で2つのことが起きてたとするなら!」
「あ、そういうことか!」
「明日朝早く、21号室に行きましょう!」
「そうだね」そしてその日はお互いに明日の朝早くに集合のためそのままお開きとなった
「おはようございます。西村さん」
「おはよう」
「早速21号室に向かいましょう」
「そうだね」そう言って西村さんはアパートへ向けて車を走らせた。
「久しぶりに来たな」
「えぇ、3ヶ月ぶりです、21号室に入るのは」
「もしこの部屋に誰かが住み着いているのなら部屋の中で起きた出来事は解決する」そうして21号室の鍵しずかに開け、部屋の中へ入る
「誰だ!」西村さんが声を荒げと、奥の方からドタドタと足音がした
「まて!」西村さんが中に入り、人の腕を掴んでいる。
「捕まえた!」
「離せ!」そういい抵抗している
「誰なんだお前は!」西村さんが明かりをつける
「女性?」
「何でこの部屋にいる」
「わかった、話すから手を離してくれ」そう言うと彼女は抵抗するのを諦めたのかその場に座り込んだ
「いつからここにいるんだ?」
「もう25年くらい前だ、9歳の時からここにいた」
「9歳なら小学生じゃないか、何でこんなところに」
「親に捨てられたんだよ、そして最初の頃は野宿してたが、やがて雨風を凌げるところがほしいと思って探している時にここを見つけた」
「ここに住んでる住人を襲ったのはお前なのか?」
「そうだよ、食べ物も金もないだから襲った。それに私の正体がバレたら面倒だからな」
「イタズラ電話は?」
「前に殺したやつの携帯からかけてた」
「この部屋に住んでて何もなかったのか?」
「いや、たまに変な女の霊を見ることはあったが、別に何もしてこないし気にしなかった」
「なるほど、じゃあ貴方はここに入居してきた人を襲って早く出て行くように促したと」
「そう言うことになるな」
「ったく、ここはまだ俺が借りてる部屋だ、
でもそうだな、お前がこれから真面目に働けるまでこの部屋に住んでもいい」
「本当か?でもこんな勉強もできない女を雇ってくれる会社なんて」
「私の会社で雇おう」
「「え?」」
「何で皆川くんまで驚く」
「え、だってえ?西村さんって社長さんだったんですか!?」
「あれ、言ってなかったか」
「おいおい、まて、雇ってくれるのか?私を?」
「だからそう言ってるだろ」
「仮にも犯罪者だぞ」
「別に俺は前の住民に興味はない」
「そうか…ありがとう…助かるよ」
「あの、話がまとまったところでなんですけど」
「この部屋に謎は解決しましたがお札って?」
「あぁ、もしかしてこれのことか?」
「あーそれそれってえ!?」
「これは昔住んでた住人が私の物音にびっくりして貼りまくってた」
「なんだ、そう言うことか」
「ところでだが、皆川くん…君、心霊スポット巡りとかしてるのかい?」
「急にどうしたんですか?」
「いや、今ふと思ったんだが、君が呪われたのってここが原因じゃなくて、他の心霊スポットなんじゃないかなって」
「え、まさかの…」
「はぁ…君って子は全く…」
「なんかすいません」
「これで一応解決だな!」
「そうですね!」
そうしてこの話は一連の話は解決した…と思っていた。
1年後…
トゥルルルトゥルルルル
「はい、西村です。」
「あ、西村さん…じゃなくて弘賢さんいますか?」
「え……すいません…主人は2年前に亡くなりましたけど…」
「え、でも1年前に会って…た…」
「ねぇ、皆川くん?」
完
ブログ〜最恐の体験談〜 田中栄作 @Yamaki1156
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