日常がドット絵に見える男
ぽんぽん丸
日常がドット絵に見える男
大学に行く。100年前のヨーロッパ人の大発見について詳しい日本人が話をする。私は声を聞き板書を読解する。
家に帰る。文明が崩壊した世界に取り残されて闊歩する獣の形をした機械をぶち倒す。私は14個のボタンと2本のジョイスティックで彼女を操る。
大学に行く。興味のあることの、興味のない部分を聞く。早く終わらないかと考えながら私はただ座って聞き読解する。
家に帰る。彼女の育ての親が死んだ。私はもう機械獣をぶち倒すだけではない。あの良き父親の仇を討たなくてはならない。
大学に行く。専門ではないハナから興味のない話を聞く。ただ聞いて読解する。
家に帰る。倒した機械獣の部品を使って火や雷や氷の矢を作る。彼女の10倍くらいでかい機械獣を打倒した。強くなったことを実感した。
大学に行く。イタリア語の授業。チャオ。私は聞き読解する。
家に帰る。彼女の出生の秘密に迫る。この世界の成り立ち、なぜ彼女が生まれたのか。彼女にとって決して幸せなものではないと予感した。だけど私は真相に向かって進み続ける。知らないほうが幸せでも、知らなければならないことがある。
大学に行かない。獣の形をした機械がなぜ必要だったのか。なぜ彼女が生まれたのか私達は真相を知った。あの良き父の仇を討った。しかし終わりではない。旅の中で出会った人々の暮らしを壊す存在がいて、私たちは戦わなければいけない。
サイゼリアに行く。昼間にOBとご飯を食べる。彼は仕事の不平不満をさんざん並べた。ええとこじゃなくてごめんなと謝りながらおごってくれた。
家に帰る。いよいよ人類の存亡をかけた戦いに身を投じる。機械の獣が群れを成し、これでもかと希望の都に押し寄せる。やつらを打ち倒し、搔い潜り、ついに元凶を制圧する。世界に平和をもたらした。
朝が来るころ。私はまた最終決戦の前に戻った。平和になる直前の世界で残されたクエストを受けて回った。彼女が生まれ育った厳しい雪山でさえ方々旅した今では暖かさを感じる。西へ進んで熱い荒野に初めてたどり着いた時のことを思い出す。雪山から太陽の照る荒野にたどり着いた時、世界が広がったことに感動した。どの場所も、見たことのない厳しく豊かな自然が息づいていて、どこに行っても記憶に残る出来事に溢れていた。だけどこの世界でできることはもうない。
私は最後にでかい機械獣を2体同時にぶち倒した。何度も死んで2時間かけたでか物を2体同時に5分とかからず打倒した。私は荒野に立ち、故郷の雪山に向かい沈む夕日を眺めてからゲーム機の電源を落とした。
大学へ行く。黒板の板書。白黒の講義室。100年前の話。白黒8ビットで足る世界。
私はただ見聞きし読解する。いつか就職して身を削りサイゼリアをご馳走して同性の後輩に謝る人になる。
アプデ希望。
日常がドット絵に見える男 ぽんぽん丸 @mukuponpon
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