中和の魔術
榊 薫
特許と仕事
魔術にとって“タネ“や仕掛は欠かせません。
あまりにも不思議なので、「ぜひ“タネ明かし”して欲しい」とせがむと、
「なーんだ、そんなことだったのか」ということになるようです。
“温度が上がりにくい”程度のことは、目に見えないので魔術の見せどころになりませんが“魔術のタネ”に使えそうです。
強酸と強塩基との中和熱は高く、100mlの濃塩酸の中和に必要な水酸化ナトリウムを加えると、「絶対真似しないでください」というほど熱くてビーカーを持っていられなくなり沸騰します。
ところが、教科書には、中和熱を押さえてゆっくり反応させる方法があることも書かれています。強電解質を分子の電荷で引き寄せておくと、発熱が穏やかになり反応抑制できます。あたかも、“お盆休みの車の大渋滞”にはまって、ゆっくりとしか進めなくなる状況に似ています。
ところで、物まねのうまい生成AIに手出しさせない為には、一工夫が必要です。“肝心のところを表現しない”か、“無数と思われるほどのやり方を表現する”と良いようです。
特許の場合も同様です。物まねの得意な国がマガイモノで攻め込んできます。無防備な政府に対抗するには自衛するしかありません。薬剤の物質名を限定し、何に使うのか明らかにすると、生成AIにやられてしまいます。
そこで、効果の有るものも無いものも数多く記載することで、やる気が起こらないような無味乾燥した特許用語で仕上げると使えるようには見えません。そうなればしめたもので、どんなに魅力的な戦略が隠されていても生成AIの対象にならなくなります。
専用実施権は取れませんが、この回避方法で特許出願することで、"万全を尽くした魔術の準備"が整います。
魔術には、多くの有害物を含む強酸性と強アルカリ性の廃液を使います。これらのpHが2以下、または、12.5以上の廃液は、特別管理産業廃棄物となるため、専門業者に委託し、タンクローリーで別々に運ばなければなりませんが、小さなめっき工場には引き取る順番がなかなか回ってきません。
従来、両者を混ぜ合わせると発熱し危険でしたが、この発熱抑制剤を一緒に混ぜると、液体がスラッジに変化して固まるだけでなく、中和されるので一般の廃棄物処理業者に委託できるようになります。
中小めっき工場に「特許出願中」を売り口上にして魔術の見せどころを自信たっぷり実演すると、「あっ」と驚いて"魔術のタネ"を欲しがってくれます。
中和の魔術 榊 薫 @kawagutiMTT
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