時代の荒波も越えてゆけ

イギリス領のアジアの港町にて、とある船の船長・コリンスは、とあるお嬢様が公開中に見かけた人魚を、彼女と共に探し出してほしいという命令を受ける。しかし、実のところ、コリンスには、その「人魚」に心当たりがあった。
十九世紀のアジアを舞台に、おてんばな少女のひと時の冒険と、その後の人生を描き出した、中編歴史小説。専門的な言葉は出てきますが、章の最後に用語解説が乗っているので、それらをひも解きながら読んでいきます。
作中の時代は一見平和ですが、あちこちに火種が燻っているような、非常に危険な時代でもあります。そんな場所と時代でも、心温まる瞬間があったこと、そして、その時に得たものが「彼女」に灯り続けていることは、力強い希望として受け取りました。