エピローグ
施設長一日
雅子は朝の光が差し込む窓際に立ち、庭の景色を見つめていた。彼女の表情には深い思慮と決意が刻まれている。毎朝、こうして自然の中で静かなひとときを過ごすことで、彼女は心を落ち着かせ、これからの日々に向けての準備を整えるのだった。
施設の設立から数年が経ち、雅子は多くの志願者たちと向き合ってきた。彼女はその一人ひとりの背負う痛みと苦しみを理解し、共感しながらも、常に冷静でいなければならない責任感を感じていた。彼女の心の中には、医師としての使命感と人間としての感情が常に交錯していた。
ある日、雅子は勤務医の古平誠司と看護師の荒川澄江と共に、安楽死を望む新しい志願者の面談に臨んでいた。志願者の目には希望と不安が混ざり合っており、雅子はその瞳を見つめながら静かに語りかけた。
「私たちはあなたの意思を尊重し、最期の瞬間まで支えます。でも、その決断が本当にあなたにとって最善の選択であるか、もう一度考えてみてください。私たちはいつでもここにいます。」
雅子の声は穏やかで、しかしその言葉には重みがあった。彼女は毎回こうして志願者と向き合い、その一人ひとりに寄り添うことで、自分の役割を再確認していた。
夜、雅子は自室で一人静かに日記を綴っていた。彼女の日記には、志願者たちの物語とともに、自分自身の葛藤や思いが書かれていた。
「今日は新しい志願者と話しました。彼の目には深い悲しみが宿っていた。私たちの仕事は、ただ彼らの最期を見届けるだけでなく、その瞬間までの時間をできる限り穏やかに過ごせるようにすること。私自身の心も強くなければならない。」
雅子はペンを置き、深呼吸をした。彼女の心の中には、常に施設の未来と志願者たちの最期の瞬間が重くのしかかっていた。しかし、その重圧が彼女を動かす原動力でもあった。
雅子の視点から見える世界は、痛みと希望が入り混じったものであり、その中で彼女は一人ひとりの人生に寄り添いながら、最善の選択を導くために尽力していた。彼女の決意と情熱は、施設全体に影響を与え、志願者たちが安心して最期を迎えるための大きな支えとなっていた。
静寂の最期 @suzuki090
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