第25話 瓜二つと消えた人物
「はい·····?」
「ですから私は子供を産んだ覚えはありません」
洋子夫人はそう言うとスっと振り返り部屋を後に
してしまった。
ぼく達が固まってるままいると入れ替わりで西条さんが入ってきた。
「おや、皆さんどうしました?狐につままれたような顔をなさって」
「あの···実は·····」
ぼく達は先程までの出来事を西条さんに説明しました。
「なるほど。そういう事でしたか。確かにあの肖像画は洋子夫人ではありません。肖像画に描かれているのは
「姿を消した····?」
「はい。それからしばらくして旦那様が洋子夫人を連れていらしたのです。しかし、見間違えてしまったのも無理はありません。何せお二人は姿かたちだけでなく仕草まで何もかもがそっくりだったのですから」
「つまり今の洋子夫人は後妻って事なのか」
「祐葉はこんな時でも状況整理してて冷静だねぇ。でもでもぉ、そんなにそっくりな人がいるなんて凄い偶然だね」
恵里菜の言う通りだ。そんな都合のいい人がいるなんてぼくにはにわかに信じがたい。
「皆さんそれよりお茶はいかがですか?美味しい紅茶を淹れましたよ」
西条さんはそう言ってぼくらにお茶を出してくれた。そしてぼくらのこれからの調査のアドバイスをくれた
「これから我々の国の警察の方にお会いしてみるのはいかがでしょうか。皆さんの事はこちらにいらっしゃる前から話をしています。きっと有力な情報を得られるやもしれませんよ」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
ぼく達は西条さんに礼を言い、地図を頼りに目的地へと歩く。
「着いた······」
ぼくはポツリと呟いた。
そこには大きな歯車が飾られた警察署の門があり、ぼくらは門番の方に事情を説明して門を開けてもらい、中へとゆっくり入っていった。
「皆さんが事件が起きた屋敷から依頼を受けたという討伐隊の方ですね。初めまして。署長の
やや小さめながらもしっかりとした威厳を感じさせる男性が重めのある低い声で一礼をする。
「あの··よろしくお願いします·····」
ぼくが緊張して挨拶をすると横から恵里菜がひょこっと顔を出し、ポッケからお菓子を取り出した
「これ良かったらお近付きの印にぃ〜」
「ってそれさっきの御屋敷で出してもらったものじゃない····恵里菜いつの間に持ってきたの?」
「雪姉ぇ固いことは皆まで言わずにぃ、でっぷりした心で受け入れようよぉ」
「何か受け入れると私が色んな意味でふてぶてしく見える気がするから却下するわ」
二人がそんなやり取りをしていると権藤署長が手を横に振る。
「失敬。甘いものは食べない主義で。しかし気持ちは受け取らせていただきます」
権藤署長はそう言うとぼくらを一瞥する。
「本来こういった事は我々で解決する事ですが、あくまで我々があなたがたを頼るのは万が一だと言うことをお忘れないよう。依頼はあくまであの屋敷の方々で、我々はあなた達を依頼した訳ではありませんので、そこの立場関係を今一度自覚願います」
低く重みのある声はぼく達の緊張感を一気に高まらせた。
そんな中雪姉ぇは毅然とした態度で返した。
「もちろんそこは承知しています。ちなみにそちらの方である程度目星などはつけられていたりしますか?事件から既に3日経っている訳ですし」
権藤署長から視線を逸らさない雪姉ぇ。こういう時でも凛とした雪姉ぇはかっこいい。この姿に何度助けられたか分からない。
「目星をつけている人物は一人います。ここ数日姿を消している
権藤署長はそう言うと1枚の写真を見せてくれた。
そこには痩せた長身の男性が写っていた。恐らくこの人が金子という人物なのだろう。
ぼくらは顔を見合わせてアイコンタクトを取り、署長に軽く挨拶をして警察署を去った。
「こうなったら俺らが先にその金子ってやつを見つけ出すしかねぇな」
「祐葉がそんな顔すんのも分かるぜ。なーんか腹立つぜあの署長」
「澁鬼も似たような顔してるから落ち着きなさい。気持ちは分かるけどね」
3人はどうやらあんまり良い気分では無いようだ。ちょっと今は触れないでおこう。
ちなみに恵里菜にその後、恵里菜に視線を向けたら屋敷でのご飯を今から楽しみにしてるのか「お腹減ったぁ〜」といつも通りの調子だった。
とりあえずぼく達の次の目的が決まった。
警察が睨んでいる金子という男を警察よりも先に見つけ、何か1つでも多く情報を手に入れる。
ぼくは正直権藤署長に対し特に思ったことは何も無かったのだが、メンバーの過半数がこんな感じなのでとりあえず皆と合わせる事にした。
【祝700PV】トラウマ・スピリウム─精神の葉っぱ─ 蒼(あおい) @iutoori6
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