ハイウェイ
「...で、どういうわけ?」
会議室から銃声を聞いて様子を見に来た四季の目に最初に映ったのは、
扉のすぐ横に寄りかかって寝ている天音の姿とゴウの横にある椅子に拘束されている
見知らぬ男だった。
「コイツはどういう理由かわからないが、あんたを襲いに来たようだ。それを天音が
対処した。一応あんたが来るまでにいろいろと動機は聞いといたぞ。
...天音を起こすか?」
「いいえ、まだ彼女には寝てもらいましょうか...ですが、起きたらすぐに説教をしませんとね。さて、どういう事情か教えてください。」
天音の方を見た後、ゴウを見て詳細を聞き始めた。
どうやら、男はヨーロッパのあるクランの男から依頼を受けたらしい。あくまでどこのクランに所属していたかは聞かなかったようだが、その依頼こ内容が四季の暗殺だったらしい。
暗殺の目的は私怨なのか、あるいは妨害工作のためか…
いずれにせよ、この場が危険であることに変わりはなかった。
「一番目星が立つのはランサー・パクトだけれど…まだ断定はできなそうね。」
以前攻めてきたからといって依頼者がランサー・パクトに所属しているという説は流石にまだ確証がない。
「どうする?ここでまだ会合を続けるか、それとも移動するか。
襲撃者が一人だけとは限らないぞ。」
先ほど話していた
一応他にも場所は用意してあるようだが…
「…そうしましょう。元からあなた達が用意したこの場所が既にバレているのが既に不安なのですけれどね。」
会合は中断し場所を別のところへ移すこととなったため、中にいた護衛と共に
また車の中へと戻る。なお、天音はまだ寝ている。
会合していた場所を発ち、別の場所へと車を走らせる。
「…さすがに起こすか。おい、起きろ。」
ゴウが寝たままの天音を起こそうと、肩をゆすっている。
ゆすられている天音は少し顔にあどけなさが残っている感じで、四季からは
その寝顔がかわいらしく見えた。
「...ったく...こんな顔して寝てる場合かよ...」
頑張って天音を起こそうとしている仲間とそれでも起きない
天音を見て微笑んだ四季は、車両の運転手の方へと行く。
「後ろに車が来ているのがわかる?」
見ると、輸送車両の後に複数台の黒い車がこちらについてきている。
運転手の顔はフロントにスモークが掛かっていて分からないが、黒い車の動きは確実にこの車両を狙っているようだった。
しかも毎回高速の出入り口付近を通過するたびに車両の量が増えているのだ。
「ええ、見えますが...まさかあれが新手と?まあ先ほど襲われたので
その可能性もありますが...この国内で早々同盟を結ぶクランを大人数で襲撃する
組織なんていないでしょう。どうせするなら海外からこちらに潜ませて来ている
少数のスパイみたいなもんがいて、それが結集して襲ってくるとか。
同じ車が複数出たってあまり危険視する必要はないのでは?」
と運転手は楽観視して話していたが、四季は違った。
四季はなんとなく危険を察知する。
これは先ほど襲ってきた男が失敗した時のための強硬手段かと。
私を暗殺しようとしたある依頼主があの男一人だけを派遣して終わり、などそんな
すぐに終わることではないだろう。
もし、その依頼主がこの中国にある
一つのクランに大きい報酬で釣って依頼していたら...
暗殺が失敗したなら、
頭にある予感が過ぎり、ゴウの方へと駆け寄る。
「そういえばゴウ、さっき尋問した男の国籍は?」
尋問した際に男の持っていた携帯の中身も調べられたので、男の国籍も分かり、
ある程度どこの組織が依頼したかもわかるだろうと踏んだ。
「国籍か...確か、中国だったはずだ。そのままここが地元、そこから浮浪者のように
依頼を受けて活動していたらしい。」
その言葉を受け、四季は少し焦る。予想は的中した。
あの男は依頼を受け取ると同時に、おそらく
依頼人の仕事を受け渡す役割もしていた。
つまり、そろそろ奴らは襲ってくる。
すぐに体制を整えねばと思い、自分自身も天音を起こしに行った。
「…おい、天音。さすがに起きろ。四季さんも起こそうとしてるぞ。」
この声は…確か仲間の声…というか寝過ごしてしまったのか…?
ゆっくり目を開けると、そこは会合場所に向かうときに使った車両の中。
「あれ、車に戻ったってことは…会合は終了したのか…?」自分が寝ている間に…と考えているうちに
「寝過ぎで何も聞いていないようだな。職務怠慢だ。」と仲間から肩を叩かれ、
そこでハッキリと目が冴えた。
目の前には四季さんがいる。でもなぜ少しだけ微笑んでいるのだろう…
「…ごめんなさい、完全に寝てました…」
現実では結構は労働のうちに相当夢も見ることなくぐっすりと深く眠っていたことから、どうやらこの世界でもそうなってしまったらしい。
「車に乗せた際に起こそうとしたんだがな…まったく、肩を揺すっても起きないとはな。」
仲間が呆れたように私のことを言っている…少し恥ずかしい。
そして、そこからなぜまた車両に乗ったかを説明させてもらった。まあ、あの男一人だけを送り込むだけなどないと誰でも分かる。
だが、それが中国の奴で、そこから
それが聞いた時点で本当かは分からなかったが、車両の後ろの窓から覗くと分かった。確かに複数の車がこの車両についてきている。
しかも、ここからたったの5分後に高速から降りるらしい。
車両が失速した瞬間を期に、襲ってくるだろうとも考えている。
四季さんは仲間に的確な指示を出して周囲を警戒させ、私とゴウは右側を観ている。
万が一に備え、既にライフルをインベントリから取りだして窓の外へと構えていた。
窓から入ってくる風は涼しく、少し目を擦る。
「来るのは高速の終わりか、高速を出たあとだ。四季も言っていたようにそれしかないだろう。」ゴウの言葉を聞き、段々緊張感が高まってくる。
そして、高速の終わりに差し掛かった途端である。黒い車両が予想通り、
こちらに向け急加速をしてきた。
しかも、それは単体ではない。複数台が車両へと向かってきている。
「当たりだな。よし、総員狙い撃て!」
四季さんの合図と同時に、一斉に車両へと攻撃を仕掛ける。
どんなゲームでも車のタイヤは脆い、そこを狙って射撃する。
「対戦車火器みたいなもんは持ってなかったが…あまりにも銃撃を車が受けすぎるとそれでもアウトだ。」
ある程度の敵は撃退できたが、まだ数体ぐらいの車両は残っている。
「あぁ、もうどこから湧いてくるんだよ…」そんなことを喚いている間に、
既に高速からは抜けている。だが、悠長に遅く会合場所へ向かう余裕はないだろう。
「飛ばすぞ!」
運転手の合図と同時に、車両は
段々奴らを引き離していく。
だが、今度は複数台のバイクが道路の脇から出てくる。
「いい加減やめてくれよ…」
うんざりしながらも、バイク達に銃撃をするためライフルにバイポッドをつけて
固定しながら射撃する。
「ちょっ…手榴弾が車両の中に…」
窓を開けたまま射撃していたが、その窓から敵が手榴弾を入れてきた。
爆発の猶予は数秒もないし、ここはどうにかして窓の外に投げるしかない。
「全員伏せて!」
地面に落ちた手榴弾を拾い、ゴウを退かして窓の外へと全力で投げる。
だが拾う時間が遅かったのか、
手榴弾は投げた瞬間に目の前で不幸にも爆発してしまう。
「ゲホ…」
体中が痛い。手榴弾の破片でも刺さっているのだろうか。床にふっ飛ばされ、起き上がることもできない。そして、肌が焼けるような痛みに襲われる。
「大丈夫か、しっかりしろ」
「はぁ...あ...」
ゴウが起き上がらせてくれたが、痛みで早々銃を持つこともできないが
「安心しろ、どうやらいなくなったようだ。」
とゴウの知らせを聞く。
ありあらゆる道路に広まる惨状。しかも交戦中に通っていたプレイヤーたちの車が
事故、さらに被害が拡大している。
「ぐ…」
地面に座り、服を脱ぐ。脇腹などに結構な数の切り傷。手榴弾の破片で、ついたものだろう。そして、腕には火傷をしている。
応急処置だが、しっかりと破片を取ってから包帯を傷口の上へ巻いて。
「痛っ…」
破片を肌から抜き取るときに、結構な痛みを伴う。出血も酷い。
「敵の攻撃はどうやら止まったらしいわね。天音さん、その傷では動くのは危ないから、座って休んでいて。」
四季さんが休むように促してくれたが、護衛というからにはしっかりと守らなければならない。だが、立ち上がろうとしても痛みでまた倒れてしまう。
「いえ…あくまでも私は護衛だから…」
と割り切って、ライフルを杖の代わりのようにして立ち上がろうとしたが
、四季さんはそれを止めた。
「え…?」
「いい?いくら護衛が大切だからといって、自分の体を犠牲にして他人を悲しませる手助けをするのはない。いいから、休みなさい。」
「いえ、でも…」
周りが頑張っているから自分もしなければ、と言う気持ちがつい出てしまう。それが上司に言われたときでも。
「じゃあ、強引に休ませるしかないね…」
四季さんがそういった瞬間、自身の首に強く手刀を打ちつける。
「え…?」
漫画とかアニメとかで手刀で眠らせる猫写はよくあるが、ここまで強いとは…
あまりの痛みに、そのまま意識が落ちる。
四季は天音を強引に眠らせた後、また運転手の方へ。
「はい。目的地にはあと数分で着きます。
もう心配は要らないでしょう。」
どういう自信があるのか。怪しげな笑みを浮かべている。
すると、四季のスマホに電話が入る。
「…はい、四季ですが。」
その着信にすぐに答えると、少しの受け答えをしてから電話を切った。
「…何かあったか?」
ゴウが聞くと、四季はこう答えた。
「京都での会合が終了、ロシアとの協力関係を結んだらしいわ。あとは私らよ。」
次の更新予定
2025年4月1日 00:00
Exsisting Infantry 拉麺眼鏡 @lens_pain
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