第3話
「そういえば食費とかってどうするんだろう。」
歩道を歩いていると隣のルミネが聞いてきた。私は財布を取り出して答えた。
「梓さんから預かってるよ。シリウスさんには任せれないらしいから。」
「私はお金の管理下手だから正解だよ....」
「そんな気がする。」
数か月前にルミネが大量に課金してたことを思い出した。
「前に課金したらお母さんにばれてめっちゃ怒られたよ......それよりも。」
「それよりも?」
「なんでさん付けなの?呼び捨てで良いって。」
「んー。なんとなく?」
理由は特にないけどしいて言うならルミネが今まで出会ってきた中の人でダントツに美人さんなので少し緊張しているところだろうか。
「じゃあ呼び捨てにしてー。」
「はいはい。わかったよ。」
「ねー。あやせちゃん?」
「何?シリウス。」
隣のルミネを見ると嬉しそうに笑っていた。
「シリウスって変だよね。」
「ええ!?そんなことないって。」
「じゃあなんでニヤニヤしてるの。」
「だってずっとあやせちゃんは男の子の振りをしてたからこんな風に話せるなんて思ってもなかったし。」
「まぁそれは私もそうだけど。」
「あ、あそこがコンビニだね。」
交差点を曲がったところにコンビニがあった。
「いらっしゃいませー。」
聞きなれたコンビニの入店音が鳴り響く。
「ポテチ、クッキー、ましゅまろー。」
ルミネは上機嫌で買い物かごにお菓子を投げ込んでいく。お金を梓さんから預かってるとはいえルミネは容赦ないな。
「あやせちゃんはリンゴとオレンジどっちが好き?それとも炭酸?」
「オレンジかな。炭酸は得意じゃない。」
「一緒だ。」
「口がいがいがしちゃうんだよね。」
「わかるー。」
大量のお菓子と1.5Lのジュースを支払って家に戻る。これが大人買いってやつでは?と少しテンションが上がった私であった。
家に帰って来た私たちは手を洗ってからお菓子パーティーを始めた。リビングの大きなテレビでアニメを流しながら食べる。普段あまりお菓子は食べないけど今日は食べ過ぎないくらいに食べようかな。
買い込んだお菓子は流石にすべては食べきれなかったので輪ゴムで口を縛っておく。いつしかアニメを見ていたまま私たちは二人そろって眠ってしまった。
「起きてーあやせちゃーん。」
「なぁに。」
肩を揺すられて目が覚める。変な体制で寝たからか体が痛い。
「もう夜だよ。」
「まじか。」
窓を見ると外は真っ暗闇だった。
「おなかすいてる?」
「少し。」
「じゃあ夜ご飯作るから待ってて。」
「ありがと。」
私は立ち上がると少しストレッチをしてからキッチンに向かった。冷蔵庫には焼きそばの麺があったはずだからそれでいいだろう。
「焼きそばでいい?」
「うん!大好物。」
野菜と肉を炒めてからほぐしておいた麺を入れて混ぜ合わせる。最後にソースをなじませたら完成だ。
「できたよー。」
「はや!」
ダイニングテーブルに置く。本当はあと一品くらい作りたかったけど今日はこれで勘弁してほしい。
「いただきます。おいしい!」
「ほんと?良かった。」
「これから毎日食べれるなんて幸せだよ。」
「おだてすぎ。シリウスは朝はパン派?ご飯派?」
「今までは日曜日だけパンだったかな。」
「うちと一緒だね。じゃあそれでいいや。」
明日の献立を考えながら焼きそばを食べる。今日はなかったけど焼きそばは塩の方が好きだなと思った。
「同じ家なのに通話してるの変な感じするね。」
「わかる。」
ご飯を食べ終えてお風呂に入った後早速新しい環境でゲームをすることになった。ちなみにシリウスが「ご飯作ってもらってるから片付けと掃除はやる。」と言ってくれたのでお皿洗いとお風呂場の掃除はやってもらった。
「うーん。やっぱエイムずれるなぁ。」
ゲーム内の射撃訓練場と呼ばれるエイムを調整するために的を撃つモードをやりながらルミネと話す。
「感度変えたら?」
「うーん。ルミネは今どれくらいなの?」
「コピペするよ。」
「うーい。」
通話アプリに送られてきた感度設定をコピーして使う。最初に横にマウスを振って感覚を掴んでから的を撃ち始めた。
「めっちゃ当たる。」
「この前の世界大会の優勝チームのエースプレイヤーの感度だからね。」
「ルミネはすぐ感度変えちゃうよね。」
「そっちの方が当たるから。」
そのあとはしばらく集中して新しい感度に慣れた。
「あ、そういえばあやせちゃん。」
「なに?」
「私配信始めようと思ってるんだけどさ。」
「えー。いいじゃん。」
「配信に声乗せてもいい?」
「あー、ボイチェン入れたほうがいいかな。」
「なしで良いでしょ。あやせちゃんの声かわいいし。」
「そんなこと初めて言われた。」
「そお?」
「だって昔はめっちゃ煽られたし。」
「それはまだ子供っぽい声だったからじゃない?いまはいい声してると思うけど。」
「おだてられてあげるよ。」
「ふふ。じゃあ配信スタートします。」
「初めての配信なら人は来ないでしょ。」
「まぁねー。じゃあランク行こ。」
「おっけー。」
いつも通りのランクが始まった。一応私たちは一桁と呼ばれるアジアで9人しかいない最上位レートにいるのでマッチングする敵も同じように一桁や二桁のプロゲーマーや猛者ばかりだ。それでも私たちは何とか3戦3勝で終わった。一マッチ30分以上はかかるのでそこまで多くの試合はこなせない。
「じゃあ配信おわりまー、ええっ!」
「どうした?」
「めっちゃ視聴者いる。」
「マジで?チャンネル名なに?」
「ルミネch。」
配信サイトで見てみる。ルミネchと入力して一番上に配信中と書かれたサムネイルをクリックする。
するとルミネの画面が映った。えっと視聴者は....2000人!?
「何したの!?」
「え、え、わかんない。私もびっくりしてる。」
コメント欄を見ると
・びっくりしてる。
・かわいい。
・試合中のバケモンみたいなエイムとは真逆だね
・LIzさんから来ましたー。
たくさんのコメントが流れている。
「LIzさんってだれ?」
目についたコメントがあったのでルミネに聞きつつ視聴者にも聞いてみる。
「LIzさんは日本人のプロゲーマーだけど。」
・✓初めまして。LIzと申します。
「本物だぁ!!!」
ルミネが大絶叫した。音割れしてとっさに耳からヘッドフォンを離した。
「うるさい。」
「ごめんだけど!これはびっくりするって。」
「そんなにすごい人なの?」
「この人はこの前の世界大会のアジア地域一位抜けのチームの選手だよ。」
「私大会見ないからよくわからないけどすごい人なんだ。」
「そうだよ。」
・知っててもらえて光栄です。
「いつも配信みてますー。ありがとうございます。」
なんかよくわからないけど長くなりそうだからエイム練習しよ。私は射撃訓練場に行くボタンをクリックした。
・おい相方射訓行ったぞ。
・流石現在ランク3位。
・逆にここまで来たのに世界大会見てないのえぐいな。
・なんなら解説系も見てないんじゃないか?
「相方射訓いったぞ、ってあやせちゃん!」
コメント読んでいたルミネに呼ばれた。
「何?」
「エイム練習行かないでよ、もう一戦行こうよ。」
「わかったー。すぐ戻る。」
射撃訓練場から退出して最初のロビー画面に戻る。
「眠いから後一戦ね。」
「うん。」
そのあとの試合は覚醒したルミネが相手をことごとキルをして終わらせてしまった。
・つっよ。
・相手一応国内プロいたぞ。
・うっそだろ。
・この二人前からいたけどSNSすら見つけられなかったんだよな。
「あやせちゃんはSNSやってる?」
「やってないよ。なんか怖かったし。」
ネナベしてたし。
「私もやってなかったから一緒に始めない?」
「ルミネがやるならいいけど。」
「いまからアカウント作るからフォローよろしくお願いします。」
「今までのクリップ(うまくいったプレーを動画保存したもの)投稿してみようかな。」
・楽しみ!
・どんな激強クリップなんだ。
・今日は配信終わりですか?
「うん。今日はこれくらいにしようかな。ご視聴ありがとうございました。」
「ありがとうございましたー。」
「じゃあばいばい。」
スマホで見ていたルミネの配信画面が切り替わり配信が終了しましたと表示された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます