第7話

予想通りというべきか結局映画の冒頭で眠ってしまったようで目が覚めると部屋は真っ暗だった。スマホを手探りで探して手に取るともう朝の7時だった。

「体痛い.....」

慣れ親しんだベッドよりは当然だけど寝心地が悪いので体が痛い。ルミネを起こさないようにそっとコートだけ取って部屋から出た。向かう先はバルコニーだ。

廊下に置かれていた自動販売機で温かいコーンポタージュを買ってそれを手にドアを開けて外に出た。

「寒.....」

外に出ると私の肌を刺すような痛みが襲ってきた。私はバルコニーに設置されていた椅子に腰かけた。寒いけどこの寒さが心地いい。冬の朝は結構好きだったりする。

「いただきます。」

缶を開けて中のコーンポタージュを飲む。飲み口は冷たいけど中のあたたかいポタージュが私の喉を通り抜けて体中をぽかぽかにしてくれる。ちびちびと飲んでいると不意に私が入って来たドアが開いた。振り返るとルミネが立っていた。

「おはよ、あやせちゃん。」

「おはよ。起こしちゃった?」

「ううん。起きたらあやせちゃんが居なくて探してたの。」

「あ、ごめん。何か書き置きしておけばよかった。」

「こんな寒いところで何してたの?」

ルミネは私の横の椅子に座った。

「ただぼーっとしてたよ。寒い日の朝にこうするのが好きなんだよね。」

「私寒いの苦手だから.....くしゅんっ。」

ルミネがくしゃみをした。体冷やしすぎるわけにもいかないし中に戻ろうかな。

「風邪ひいちゃう前に戻ろうか。とりあえずこれ飲む?」

飲みかけだけどコーンポタージュを渡すとルミネはそれを飲み干した。

「部屋もどろぉ。」

「はーい。シリウスさんは寒いの苦手なんだ。」

ドアを開けて建物の中に戻る。ルミネが来るまでドアを抑えておく。

「ありがと。冬は手がかじかむから嫌いだねー。」

「それはそう。学校の後とかお湯に手を浸けてからゲームしてたし。」

「私もそれやってたー。」

部屋の前について鍵を刺しこんだところでルミネのお腹が鳴った。

「ぁ......」

「朝ご飯買いに行く?」

「うん......」

パジャマから着替えて売店に行く。朝ご飯の時間なので人も少しだけど食堂にいた。

「何食べようかな。」

「私おにぎりとお味噌汁にするー。」

「じゃあ私も同じのにしよ。」

おにぎり二つとお味噌汁を注文して席に着いた。準備でき次第モニターに番号が表示されるらしい。レシートと一緒に渡された番号札をテーブルに置いておく。

「あと4時間くらいでチェックアウトしなきゃだからね。」

「はーい。」



「「ごちそうさまー。」」

朝ご飯を食べ終えた私たちは手を合わせた。おにぎりは作り立てで美味しかったし、お味噌汁もほっとするような味わいだtった。

「このあとどうする?」

「まだ行ってない階にいってみたい。三階とか。」

「え、でもそこって........」


「いらっしゃい!」

まだ朝早いのにそこにいた女性のスタッフさんは元気に挨拶をしてきた。そうだここはフィットネスジムだ。

「若い子が来るなんて珍しいわ。すこし運動していく?」

「はい!」

ルミネも元気に返事をした。

「シリウスさん!?」

「最近ちょっと太った感じがするから運動したかったの。」

「じゃあ私もお願いします.....」

「オーケー。じゃあまずは着替えましょうか。」

スタッフさんに服を渡されたので更衣室に行って着替える。

「着替えてきましたー。」

「うん!よく似合ってるわ。じゃあ改めまして私は松木まつきよ。よろしくね。」

「よろしくお願いします。文星です。」

「シリウスです。」

「文星ちゃんとシリウスちゃんね。二人はどこのトレーニングをしたいとかあるかしら。」

「私はお腹です。」

「私は足ですね。」

「了解。じゃあまずは軽くストレッチから始めましょうか。ついてきて。」

松木さんについて行くとマットが敷かれたスペースがあった。

「この上でストレッチをしましょう。私の真似をしてね。」

松木さんがストレッチをするのと同じポーズを取ってストレッチをしていく。さっき食べたばかりなのでゆったりとしていく。運動不足で体がなまっていたのがよくわかるほどストレッチにしては体力が持って行かれた。

「よし!じゃあ次はこっちね。」

またまた松木さんについて行くとこういう場所でよく見る自転車のようなトレーニング器具、たしかエアロバイクだっけ?がたくさんあった。

「じゃあ文星ちゃんはこれね。シリウスちゃんも準備運動がてらやってみましょうか。」

松木さんがエアロバイクの設定をしてからペダルを漕いでいく。最初は軽く漕げたけど徐々にきつくなってきた。

「じゃああと20分頑張ってね~。」

「ええっ!」

松木さんはそう言い残すとどこかへ行ってしまった。

「あやせちゃーん。」

「なに?」

「きついからしりとりでもしようよ。」

「それってさらにきつくならない?」

「りんご」

「やるんだ....ごま。」

「ま、マンタ」

「た....た、たんぽぽ!」



「よーし!二人ともお疲れさま。休憩していいわよ。」

松木さんが戻ってきてそう言った。ペダルを漕ぐのをやめる。

「あー、足があ。」

「こういうジムに来るのは初めて?」

「「はい。」」

「初めてでここまで漕ぎ切れるのはすごいわ。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ次はお腹周りだからねー。休憩終わりにまた来るわ。」



「休憩は終わり!次に行くわよ!」

松木さんがやって来た。松木さんについて行くと今度は本格的な器具があった。

「じゃあシリウスさんここに座ってね。」

ルミネが椅子みたいなところに腰を下ろした。

「じゃあ、ここに足を通して....そう!そうしたら手を前でクロスさせて腹筋をするの。」

「っ....っく.....っはっ。」

ルミネの表情はとても辛そうだ。なんとか体を起こすので精一杯だ。

「そのままのペースでやってね。早すぎてもよくないから。」

「は、っはい。」

「じゃあ文星ちゃんもやりましょうか.......」

「えっ。」


「はっ。っく。がぁぁぁあ。」

やばいこれ。腹筋が壊れる。きつい。いままでのダイエットとかで軽くやってた腹筋とは違い過ぎる。一回一回が辛すぎる。

「じゃあまずは30回やってみましょう。文星ちゃん!斜めに起きないで!」

「はい!」



「はい!お疲れ様!」

「..........」

「..........」

結局3セットやらされた。腹筋が笑っている。確かに効いている感覚はあるがそれでも腹筋がぴくぴくしている。

「きっつぅ。」

腹筋器具の上で横たわる。汗で髪の毛がおでこに張り付いている。キモチワルイ。髪を手でたくし上げると髪の毛は汗でぐっしょりしていた。

「熱いー。」

「それな。」

「お疲れ様!ドリンクどうぞ。」

松木さんはスポーツドリンクのペッドボトルを手渡してきた。

「ありがとうございます!」

蓋を開けて喉に流し込む。一気飲みして少しむせる。

「大丈夫?」

「うん、だいじょうぶ。」

胸をトントンする。

「もうすこしトレーニングしてく?」

松木さんはダンベルを持ち上げながら聞いてきた。

「流石にきついですー。」

「私もこれ以上は無理....」

「じゃあまた来てね。向こうにシャワールームあるから使っていいよ。」

「ありがとうございます。」

服をロッカーから取って来てシャワー室に向かった。



「ご利用ありがとうございましたー。」

「ありがとうございました。」

あれから部屋に戻った後少しゆっくりして、家に帰ることにした。受付の人に鍵を返してから建物から出た。

「寒いねー。」

「そうだね。」

外に出ると寒さで体が縮まる。外を歩いている人もコートやダウンを着こんでいる。

「早く帰ろっか。」

「うん。」

ゆっくりしに来たのに謎に筋トレさせられたので妙に重い体でなんとか帰宅した。




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ネフレと会ってみたら性別違ったしシェアハウスすることになったし偶にデレてくる。 緩音 @yurune

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