Choser ーエラバレシモノー

風の都にある鉱山は、風の都にとって大事な鉱山資源がある。

飛行機の燃料となる鉱山物質があり、風の都の重要な資源であり貿易の中心的輸出物だ。


都の掟で子供は入れない。

有害物質や、事故が起きる可能性があり非常に危ないからだと厳しく言われている。


もし本当に鉱山から魔物が現れたのなら、従業員は避難できているのだろうか。

鉱山の「立ち入り禁止」の看板を通りすぎて、魔物を探す。


「そもそもどうやって現れたんだ……?」


勝手に現れたのだとしたら何かと矛盾点が多いし、不自然だ。

この前の魔物もどうやって現れたのだろう。



グアアァァァァァ!!!



雄たけびだ。


「今の……奥からだ!」


俺はまた駆け出す。

いくつか鉱山はあるが、一番奥にある鉱山は特に大きい。

よく見ると、10匹ほどの魔物がいて、従業員を囲んでいた。


「これはまずい……!!」


どうか無事でいてくれ……


「うわあああ!!!」


「誰か助けてくれ……!!」


俺は岩の壁にジャンプして、そのまま走る。

そして、魔物の輪に思い切りジャンプし、従業員の前に着地した。


「き、君は……」


「俺が魔物の相手をする。その隙に逃げろ」


俺は魔物を見渡す。

この前より数は少ないが、大きさが違う。

それに、強い違和感を感じる。

何だ、この違和感……


赤い目、鋭い爪と牙。

俺は額に目が留まった。

額に黄緑色の石みたいなものがついている。


額に石……俺はハッとした。

ついさっき本で読んだ。

あの石はきっと魔石、だ。


だから、体も大きいし、変な気配があった。

これは、厳しそうだ。

そんなことはどうでもいい。



俺は、魔物を倒すのみ。



「—―絶対に、負けない」


俺は魔物に手をかざす。



グアアァァァァァ!!



魔物が雄たけびを上げると、こっちに一気に突進してきた。


「壱の氷術 垂氷アドストリクタサジッタ


手から魔法陣が現れ、その中からつららの矢が三本出てくる。

矢は魔物に直撃したが、倒れずにまだ突進してくる。


「壱の氷術 垂氷アドストリクタサジッタ!!」


もう一度矢を繰り出す。

しかし、今度はかわされた。


「……クソ」


魔物の額の魔石が光った。

そうだ、魔石だ。

あそこを狙えば倒せるかもしれない……!



「壱の氷術 垂氷アドストリクタサジッタ!!」



さっきと同じようなつららの矢が出て、魔物に真っすぐに向かう。

魔物はぎょっとしたように止まり、氷の矢は魔石に直撃した。

すると、魔物は苦しむように額を抑える。


やっぱり。

これでとどめだ。


俺は手をかざし、目にも力を込める。


「壱の氷術 垂氷アドストリクタサジッタイプソム


さっきの矢の何倍ものの大きさのつららが出て、猛スピードで魔物に向かう。

冷気がひんやりと冷たくて気持ちいい。


矢は魔物の額に直撃し、魔物は灰になって消えた。

その時、何か光ったものが地に落ちた。


「おい、後ろ!!!!」


「えっ」


従業員の声にハッとした。

振り向いたときにはもう遅かった。


魔物の鋭い爪がとっさに出した俺の腕を深くひっかいていた。



「レン!!!」



誰かの叫び声。


「うっ……!?!?」


激しい痛みに俺は立てなくなり、膝から崩れるように倒れる。

見たくはなかったが、腕から血が止まらず、傷が深い。

呼吸が荒くなる。



グアアァァァァァ!!!



……どうしよう。

このケガじゃまともに戦えない。

魔物は俺をじっと見下ろしていた。

また、攻撃が来る……でも、戦えない。



「—―風の癒術 風鈴花!!」



どこからか呪文が聞こえた。

その瞬間、知っている良い香りがした。


「この香り……」


それよりもっと驚くことがあった。

血が止まらなかった腕のケガがみるみるうちに治っていったのだ。


声の方を見ると、なぜかミカゼさんがいた。


「み、ミカゼ、さん……!?!?」


それにこの香り、呪文にあった風鈴花の香りだ。

風鈴花は万能薬だと聞いたが、その魔法は聞いたことがない。


まさか、自然魔法……!?!?

でも、ミカゼさんは自然魔法を使えない、はずだ。

それとも、俺に黙っていたのか……?


俺は立ち上がり、魔物を見る目に力を込める。

魔物は一瞬びくっとしたが、鋭い目つきに変わり、腕を振り上げる。

爪が怪しく光る。


「壱の氷術 垂氷アドストリクタサジッタイプソム


魔物の額に矢は当たり、魔物は苦しむ。


「壱の氷術 垂氷アドストリクタサジッタ!」



グアアァァァァァ……



魔物は灰となって消え、魔石だけが残った。

魔石にしては大きい気がする。

他の魔物が落とした魔石も回収する。


「レン!!」


ミカゼさんの声にハッとする。

目に涙を浮かべながらこちらに向かって走っている。


「ミカゼさん!」


俺も魔石をポケットに入れて、駆け出す。


ああ、この人はやっぱり信用できる。

この人は、他の都の人とは違うんだ。


「レン……!!」


ミカゼさんの目から涙が零れた。

その涙が地に落ちた瞬間、どこからか眩しい光が出て来た。

青い、神秘的な光だ。


「うっ……」


俺もミカゼさんも従業員も目を閉じる。


眩しい。

一体、どこから……?


光はだんだん強くなり、目を開けるのが困難になる。


「レン……!?」


「み、ミカゼさん……!」


光はさらに強くなり、都全体を包み込んだ。



『—―ン。レン。』



「……ん……?」


透明感のある声に目を覚ました。

いつの間にか俺は寝てしまったらしい。


「ここは……?」


風の都じゃなかった。

何もない、真っ白の空間だった。


「ミカゼさん!!ミカゼさん!!」


『ようやく起きたのね、レン』


ミカゼさん、かと思ったが違った。

明らかに女性の声だった。


「誰だ?」


見渡す俺の前に現れたのは青い宝石を持つ金色のクローバー型の飾りだった。

なぜか浮いている。


「これ、図書館にあった……」


『そう。レン。あなたは選ばれし者なのよ』


「喋ってる……」


『いい?レン。今魔法界は滅亡の危機にあるの』


俺のつぶやきを無視して、飾りは不思議な声でしゃべる。


「滅亡……?」


『さっき魔物を倒したでしょう。魔物は風の都だけでなく他の都も襲撃していて、もう既に手に負えない状態なの。それはレンが住んでいた時代だけでなく、他の時代も同じことが起きようとしている』


「ま、待て、何で、」


『それはわからないわ。おそらく、魔物を操る何者かのせいよ。レンが住んでいた風の都はあなたがいたからしばらくは無事だろうけど、また魔物の襲撃が来て、潰されるでしょうね』


「そ、そんな……!!」


『襲撃で都をどんどん潰して、魔法界を滅ぼすつもりなのよ。だからね、レン。あなたには魔物の発端となった時代に行って、魔物を倒してもらう。それしか今は方法はないの』


「な、何で、俺……!?」


『この時代に自然魔法を使えるのはあなたしかいない』


「え、でも、ミカゼさんは、」


『あれじゃ無理。それに、ただ自然魔法を使えるだけじゃダメ。魔石であるこのわたくしが選んだから』


「そんなの急に言われたって……」


『お願い、レン。あなたにしかできないの。私はあなたの魔法を支えることしかできないけれど、きっとを取り戻せる』


「ま、待て、聞きたいことがまだ……!!」


『……もう、時間だわ、レン』


「えっ……?」


飾りの魔石は光り始め、俺は目を閉じた。


俺が、魔物を倒す……?

1人で……?



『—―大丈夫よ、レン。あなたは1人じゃない』



優しい声にハッとしたが、光はさらに強くなり、俺の意識は遠くなってしまった。

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時を超えたKnight Wizards 陽菜花 @hn0612

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