深夜の月は綺麗
まどうふ
第1話 君は素敵だったよ
深夜、僕はコンビニまで散歩に出かけた。
深夜に外へ出て静かな街をまた見てみたかった。車は通っているが静かな街、ふと僕は空を見上げた。
「今日は満月か、綺麗だな」
朝や昼の日光も素敵だが、夜の月光の方が僕は好きだ。月明かりに照らされた僕は卯月に心を見透かされている気がした。
信号を待つ時間さえも心地がいい。夜風に揺らされるこの身体の本体は心臓、急所を乗っ取られてしまえば後は操られるのみ。
普段から文字を書いている者としてはこの夜に刺激を頂く。信号が青になり、僕は地面を踏みつける。
「こんな時間に女の子⋯⋯?」
刺激が舞い降りるその瞬間、僕は黒髪で容姿端麗な君に心を乗っ取られた。
操られる僕の身体は自ら道路に飛び出してしまい、信号無視をしてきた不安定な車に轢かれた。
「⋯⋯っ⋯⋯かっ⋯⋯」
声が出ないほどの激しい衝撃と痛み、横断歩道に倒れ込んだ体は生温かい赤色で地面を彩る。
「大丈夫?」
奇跡を信じた僕の勝ち。半目から見えるその姿は月影に映し出されていても尚 美しい。
「君は素敵だな、羨ましく思うよ」
紅く染まった君の顔は僕よりも眩しいと感じた時、胸が張り裂けそうになった。
「人間の体は脆い、気をつけなよ」
その言葉を後に、僕は意識を失った。
目を開けると知らない天井、そこは病院だった。彼女のおかげで僕は一命を取り留めることが出来た、だけど僕の心はまだ操られたまま。
だけどいくら君を探しても僕の目に映ることはなかった。
後悔、哀しみ、
深夜、コンビニまで散歩に出かけた。
深夜の月は綺麗 まどうふ @Madoohu
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