エピローグ

 お兄ちゃんがたおれた日から数日――。

 ケイスケお兄ちゃんはブレスレットのおかげか、今までどおり元気にすごしている。

「ユーレイが元気っていうのもおかしな話だけどな。アヤナのおかげだ、ありがとう」

 そう言ってしずかにわらうお兄ちゃん。

 そのすがたはいつものお兄ちゃんそのもので、あたしはとってもあんしんした。

 もしお兄ちゃんがいなくなってしまったらと、あのときは気が気じゃなかったから。


 ある日、あたしとハルト君が学校のかえりにアパートに行くと、お兄ちゃんがめずらしいものをだっこしてまっていた。

 それは――子ネコと子犬である。

「きっと二人ともおどろくぞ」

 わらうお兄ちゃんが、管理人室に入ったあたしたちのまえに子ネコと子犬をおく。

 二匹はすぐにあたしのもとにかけよってきて、じゃれついてきた。

 きれいなロシアンブルーの子ネコと、ブサイクカワイイなかんじのブルドックの子犬。

『アヤナちゃん!』

 子ネコがしゃべった!?

 それに、このこえは――水谷さん!?

『アヤナ、げんきかー!?』

 子犬もしゃべった!

 こっちのこえは――ゲンさん!!

『わたしたち、生まれかわったの。どう? カワイイでしょ?』

『オレはなんでブルドックなんだ? シベリアンハスキーくらいイケメンでいいだろ!』

「二人とも、生まれかわってもきおくがのこっていたんですか!? ふしぎだ」

 二匹のあたまをなでながら、ハルト君が言う。

『きっとね、アヤナちゃんのあのブレスレットのおかげで前世のきおくがのこったのよ。』

『だから、あるけるようになったらすぐにあいにきたんだ。ここもなつかしいなぁ!』

 あたしはうれしくなって、水谷さんとゲンさんにかおをよせてだきしめた。

「二人とも、ぶじに生まれかわったのね。よかった! おかえりなさい!」

 ユーレイアパートに、あたらしい家族がふえた。

 ううん、生まれかわって、かえってきてくれた。

 それがすっごくうれしい!

「そういえば、アカリちゃんはまだ生まれかわってないのかな?」

「オレはおもうんだけどな。ヤマギシのブレスレットで、アカリはねがいをかなえたんじゃないかな?」

 ハルト君が言った。

「ハルト君、ねがいをかなえたって?」

「人間に生まれかわるってことさ。水谷さんやゲンさんはネコに犬だからこんなにはやくさいかいできたけど、人間のあかちゃんならまだぜんぜんうごけないだろうし」

 そっか、アカリちゃんは人間に――。

「そうなれているといいな。中学生になることが、アカリちゃんのねがいだったから」

『きっとなれるわよ。わたしたちがこうしてもどってこれたみたいにね。』

『アヤナは次にアカリがここにくるまでに、りっぱな大人になっておかないとな!』

 そうだ、あたしはアカリちゃんより一足先に中学生に、そして大人になる。

 もういちど会えた時にはずかしくないように、ちゃんとしたおとなにならなくちゃ。

「だいじょうぶ、アヤナはもう一人前のユーレイアパート管理人だよ」

 お兄ちゃんがえがおでそう言ってくれた。

「お兄ちゃん! ありがとう!」

 あたしはうれしくて、お兄ちゃんのうでにくっついた。

 お兄ちゃんのうでには、あたしの作ったブレスレットがいくつもまいてある。

 いっこじゃやっぱりしんぱいで、ついついあのあとたくさんつ作ってしまったのだ。

「アヤナの甘えんぼうはあいかわらず、か」

「ヤマギシ、アカリがもどってくるまでにその甘えグセもなおしておかないとな」

「むぅ、ハルト君のいじわる~」

 そう言ってなにげなくハルト君に向けてふった手が、ハルト君の右手とかさなる。

 ふいにかんじたハルト君の体温に、あたしのむねはドキドキしてしまう。

 ふしぎそうなかおをしたあと、ハルト君がわらった。

「オレはヤマギシの『お兄ちゃん』じゃないぞ。いいのか?」

「こ、これはたまたま! ぐうぜんかさなっちゃったの!」

「ふうん、まあそういうことでいいけどな」

 ハルト君が、かさなったままの右手をぎゅっとしてくれた。

 右手にお兄ちゃんのうで、左手にハルト君の手のひら。

 なんだかドキドキしちゃうけど、この二人といっしょならきっとどんなことでものりこえていける気がする!

 あたしは目をとじ、二人に言った。

「いっしょにいてくれて、ありがとう」

 そんなあたしのうでを、お兄ちゃんがツンツンとつついた。

「アヤナ、おばあちゃんがあたらしいユーレイアパートのじゅうにんをつれてきたぞ」

「ホントに!?」

 かおをあげると、とおりの向こうからおばあちゃんがユーレイをつれてやってきていた。

 おばあちゃんとユーレイさんがアパートに入ってくる。

 あたしとお兄ちゃんとハルト君が、どうじに口をひらく。

「「「ようこそ、ユーレイアパートへ!」」」

 あたしのユーレイアパート管理人の日々は――。

 ステキな家族と大好きな友達とともに、これからもずっとつづいていく。 

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私は幽霊アパートの管理人! 緒方あきら @ogata-akira

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