髪に限らず細く細かい品が湿って肌に直接触れ続けるのは非常に不快である。ましてそれがああした背景から伸びているとなれば逃げ場がない。ピンセットで摘ままれて最初から出口のない迷路に天井から入れられるようなものだろう。生ける屍という表現があるが、本作は差し詰め生ける屍蝋か。
「なんか髪が乾きづらい」時々あるそんな現象が、今後怖くなってしまいそうです……
ある日、髪が濡れたままになっていた――そんなシーンから物語は幕を開けます。かわかない髪という設定が面白く読み進めていくにつれ、徐々に不穏な空気が立ち込めていきます。万策尽きた主人公の前に現れたのは……。ぜひこのラストシーンをその目でご覧ください。