雨が、水が隠すのは時に悲しく、時に優しい事柄なのである

留学中の異国の王子の暗殺事件を防ぐ為に奔走する王女マリーと近衛騎士シャルル。

マリーは王に伝わる秘宝を使って明るい未来を手に入れることができるのか。
事件を調べる中で、気がつくことになる自身の想いの答えとは。

主軸となる誰が王子を殺したのかというミステリの要素と三角関係の恋愛模様のどれもがしっかりと纏まっていて面白かったです。

マリーに絶大な信頼を寄せるシャルル。
命の恩人としてマリーに興味を持ち始めるヌビス王子。

マリーは二人と関わる中で、少し客観的に自身の気持ちを確認する。

このドキドキは端正な男性から向けられる視線や好意のせいなのか。
それとも特定の誰かにだけ現れる心の揺れなのか。

その気持ちの正体に気がついた時。

マリーは彼に対してどんな言葉をかけるのだろうか。

論理的に状況を整理して時間の謎を一つずつ推理していく。そんな聡明な彼女らしい思考の果てに声になる言葉が素敵でした。


結果的にニ国やその他の国と手を取り合って解決する事件の部分。

随所で出てくる話や要素を綺麗に使って導かれる感じが好きです。

時戻りの短剣。
いいですよね。

やり直すのに傷つくのは自分だけ。
ですがその世界で自分が死んだという事実を残し、抱えて生きていくのはその世界の人達。

回数制限こそありますが、そうではない感情的な部分で一度とも多く使いたくはないと思わせる。

シャルルとマリーのやり取りは最高でした。

マリーが忘れないと言った。
それ以上に欲しい言葉があるだろうか。
体で頭で分かっていても、心が胸が苦しいと叫びたがっているんだ。

そんな想いを噛み締めるように大切な人の死を見届けるであろうあの世界線の彼は素敵でした。

まだまだ書きたいことばかりです。

とても素晴らしい作品をありがとうございました。