何かに対する情熱と渇望。
姿勢として、形だけではない。体の底から湧き上がる気持ち。それは喜びだったり、怒りだったり、悲しみ、悔しさだったり。
そういう剥き出しの感情を原動力にした熱い気持ち。
すなわち、情熱から初めて、自分の身を焦がすほどの渇望を手に入れられるのかもしれない。
まことは下心丸出しの友達に誘われて、バレエスクールの見学に行く。練習中の生徒から、本物のバレエの美しさを感じとったまことは、なんとなくバレエを始めるのだが……。
簡潔にまとめられた丁寧な文章にリードされ、バレエに目覚めるまことの一幕を追体験するような感覚を味わえました。
バレエを通して、伝わってくるのは本気で物事にぶつかるということの想いと覚悟の熱量でした。
3人の先輩ダンサーと先生、プロダンサー。
まことが関わることになるこれらの先人たちが魅せる性格、言葉、行動はそれぞれが違った立場と方法で、まことに道を示すのですが、彼を通り越して読者の心にまでも強く伝わる温度感がとても気持ち良かったです。
読んでいて、バレエをしっかりと見てみたいと思うくらい楽しめました。
まことはバレエを通してどんなことを学んだのか。
最終的にどんな感情をバレエに抱くのか。
彼とバレエスクールに通ってみてはいかがでしょうか。
素晴らしい作品をありがとうございました。