第27話 復活のS
サイトーだが、ヤツは実は死んではいなかった。
なんとも信じ難い話なのだが。
サイトーは、巨漢でブヨブヨだったのが幸いして。
やつが毒蛾女子の猛毒にやられ死亡したのち、疫病の蔓延の防止のため、皆でその死体を焼却炉にぶち込もうとしたところ、あの体格では焼却炉の入り口は狭過ぎて詰まってしまったのだ。
――ザクッ、ザクッ。
「はあ、はあ、しんどお……。ああ、面倒かけるやっちゃで。なさけない」
モヒカンをぶるんと振るわせたパンチロは、スコップで土をかき出しつつ言った。
おれたちはしかたなく出来るだけ深い穴を掘り、そこへきっちりサイトーの死体を埋めて埋葬した。
そのはずだった。
ところが後日、雷雨の中、蘇ったのだった。
自力で墓から這い出して来て。
その様たるや、マジ、ゾンビかと思った!
雷もゴロゴロ鳴ってたのでフランケンシュタインの怪物のようなムダにゴシックな怪奇ムードまであったな……。
どうも雨に毒を洗い流され、落雷が心臓マッサージの効果となったとか。
詳しいことならテクノにでも聞けばわかるだろうがどうでもいいか。
サイトーは猛毒に耐性のある特異体質だとかも言っていたような気もする。
何にせよ、パンチロにテクノ、そしてサイトーにはクロエの存在は知られてはならないのだ。
ツバキの話ではサイトーならさほどの脅威ではないそうだが。
「ならなんで、おまえサイトーなんかに犯されたりしてたんだよ?」
と疑問に思ったことをツバキに聞いた。
「まぁ、ほんとならあんなのが襲いかかってきたとしても、あの悪魔の爪さえ気をつけてればキックかグーパンチ一発でやっつけられるんだけど。……特にテクノはSMの趣味があってさ。パンチロと二人がかりでぼくをよく緊縛して身動きできないようにされたりで……サイトーはそんな隙を狙ってくるんだ」
キリエとニョロは外に出ていたが、クロエは黙っておれたちの話を聞いていた。
教育上よろしくないな。変なことを覚えないで欲しいが。
六人の少年アダムの創世大残酷 西 喜理英 @velvet357
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