第26話 口止め料

 暗闇の中に消えていったクトゥルフ女子として誕生したお姉……。


 暫くあまりのヘンテコな出来事にポカーンとしていると、遠くからクロエの声が聞こえた。

「タマにさまのエッチぃぃぃ!! 見ちゃいやよぉぉぉ!!」


 ……エッチとかそんな言葉、教えてたっけな? などと思っていると、ようやくクロエが戻って来た。


 ――ところが、クロエだけではなかった。もう一人の人影があった。だ、誰だ!?


 クロエと共にこっちへと向かって来る。

 彼、いや彼女に見つかってしまった!

 ツバキだった。


「トイレで起きたら、外に灯りが見えて、なんだろ? と思って来てみれば…………」

 

「こ、この件は、どうか皆には内緒に! 頼む!」


「ここ最近、タマキって何かこそこそしてるなとは思ってたんだよね。みんなから一歩距離を置いてるってくらいは前から感じてたけど」


「どうか内緒に! 頼む!」

 おれはツバキに追いすがらんばかりの勢いで言っていた。


「折角だし、ぼくと一緒にお風呂に入ろうよ。タマキのからだ流してあげるね」



 *



 おれとクロエ、キリエとニョロだけだったところ――かろうじて日が差す校舎の奥では、ツバキとその赤ちゃんとも一緒に過ごす時間も長くなっていた。


 クロエとキリエにニョロは、ツバキにも懐いた。流石にあとはおれしか関わる人間がいないなんて寂しかったのだろう。


 口止め料を口で払う。

 ツバキがチュッチュして欲しいというのなら、おれはした。


 そして、クロエもその真似をしてくる…………。

 まぁ親子みたいなもんだから、いっか。

 しかし、どうもツバキが悪影響与えてしまって、ませた子になりそうだ……。 



 ツバキは言った。

「シキはイケメンだけじゃなくってさ、本当は優しいんだ。でも優しいのはシキだけだから」


 ツバキは更に続けた。

「あと、パンチロにテクノはかなりの色情狂で見境ないよ。更にそこに異常性癖のヘンタイを極めたサイトーまで加わったら本当にヤバいんだから! ぼくが産んだこの子の父親ってその内の誰だかが判らなくて……シキの子だったら良いのに」


 えっ、シキやパンチロだけでなく、テクノにあのサイトーまで既に大人の階段登ってたんかい!



 し、知らなかった……。

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