この学校、ただの青春じゃ終わらない
- ★★★ Excellent!!!
学校という小さな世界に広がる、大きな異世界──『異説・百物語~物部カタルは斯くも語りて~』は、規律に縛られた青春の中に潜む怪異たちが、まるで思春期の不安や孤独を映し出しているかのようです。
特に愛莉の「絡新婦(ジョロウグモ)」への変貌には胸を締め付けられました。抑えきれない衝動、偽りの仮面、そして孤独に抱えた傷…あの教室の窓際の席が、今も春香の記憶に刻まれているのが切ない。風紀委員長のカタルが冷静に事件を解決していく姿もまた、青春に現れる“導き手”そのもの。彼の呪符が、実は私たち自身の心の葛藤と対話しているように感じます。怪異はただ恐ろしいだけでなく、人の想念や絆が形を変えたもの。まるで読者自身も、カタルたちと共にこの怪異世界を歩いている気分になれる一作です。
追記:『河童』もレビューに書きたかったんですけど、まだ途中までしか読めてなくて、割愛させていただきました。また読了後にでも、コメントにて書きたいと思います。