浮気していたはずの婚約者が溺愛してきます!?

この世界の聖女は不憫です。
長生きできませんし、王族と名ばかりの婚約をします。神殿で暮らし、自由はありません。それでも使命感に燃え、魔物を退治してきたテオドア。
しかし今、彼女の体調は思わしくなく歩くのもやっとで……。

冒頭はもうそれはそれは可愛そうなのです。周りは敵だらけに見えます。
テオドアが純粋で健気なだけに、よりいっそう不憫なのです。

が、ややあって物語が展開すると趣が変わってきます。
変態です。変態が出てきます。
しかも変態は王子なんです。美貌を放つ変態なんです。
どのあたりが変態かと言うと、パワーワードを放ってきます。

弁護すると、変態になりたくてなったのではなく、慈愛ゆえの変態、白衣の天使的な思いからこぼれ出た発言なのですが……いやもっとさ、言い方あるじゃん。どストレートすぎやで!!

しかしそれも徐々に打ち解けていくと、誤解も解け、王子はその美貌に似合う素敵さをたくさん発揮します。
というか、このイーリアス王子。元々はテオドアにつらく当たる最低王子だったはずなのですが、変態になって……いや、どこか様子がおかしいのです。その事情が実は……。

聖女をやめ神殿を出ても魔物に命を狙われるテオドアと、不思議な知識を持つ王子イーリアス。

クライマックス、現代人にもずいぶん身近になってしまったあの問題が出てきます。
確かに異世界転生でなく転移、召喚って、そういう面があるよね、と。
それは何かは読んで確かめていただくとして。

テオドアの上品な語り口で進む本作。さくさく展開していき、笑いあり、感動あり、信念ありの面白さです。登場キャラも魅力たっぷり。ちょいちょい出てくるお邪魔虫の魔物も、登場をますごとに小物感、いや、お決まりのパターン感が出てきて面白かったです。

完結済みの作品。一気読みもおすすめです。


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