最終話
真壁の退院後、真壁たっての希望で4人は本殿が崩れた神社へ来ていた。来月には撤去作業が始まり、新たに公園が作られるらしい。その前にと、花やお菓子、それと酒を沢山持ってお供えするためだ。
真壁がぽつりぽつりとあの時のことを話し始めた。
「本殿からどうしても出られなくなって、もうこのままダメかと思ったよ。でも、一瞬、優と裕太の姿が見えた。2人が何か楽しそうにし始めたと思ったら、急に目の前に橋が現れた。この橋を渡れば帰れる、なんかわかんないけど、そう思って無我夢中で本殿から飛び出して橋を渡ってさ。覚えてるのはそれだけだ」
それを聞いて、裕太が何かに気づいたように言う。
「それ、俺と優が木くず渡って遊んでた時だな」
「怖くて押し相撲で気を紛らわせてたときだな」
優と裕太は、真壁を間に挟んで両脇から肩を組むと、
「なんでもいいよ、無事でよかった」
「そうそう、無事でよかった。今日はお祝いに飲み明かそうぜ」
とはしゃいでいる。
「おい、手合わせるぞ」
お供え物を並べ終えた樹が3人に呼びかける。
4人は並んでしゃがみ込み、境界を越えていなくなってしまった友人や、長い苦しみから解放された少女を思いながら、しばらく祈りを捧げていた。
越えた先にあるもの 貫田 実世(ぬきた みよ) @Miyo_Nukita0628
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