000000
教室のドアが開く音に振り返る女。
誰が来たのだろうと軽い気持ちでドアの方を見ると、学校では見かけないはずの人物がどこか気まずそうな顔をして立っていた。
「......真面目ムーブですか?」
ドアに近づいてから、彼の登校を咎めるように女は男を見つめる。
「もう休む理由がなくなったもので」
やけに冷たく言い放たれたその言葉に思考を巡らせる女。
男は痺れを切らしたように「もう会う人が居なくなった」と呟いてから自分の席に
向かった。
女はやっと理解して、必死に言葉を探してから「髪、せっかく染めたのに。切っちゃったんだ」と出来るだけ当たり障りのない言葉を掛けた。
「ああ」
襟足のあった場所をごつごつとした指で撫でる男。
「一生懸命背伸びしてた可愛い男が、元の身長を受け入れただけだよ」
「うえ、気持ち悪い。」
毒を吐きながらも女の口角は愛らしくつり上がっていた。
見慣れたその黒髪を見つめる。
日本人らしい漆黒に染まったその髪色は、安っぽいカラーシャンプーで染めた青色よ
りもよっぽど綺麗に輝いていた。
「......背伸びの漢字も、書けないくせにね」
せのび 有くつろ @akutsuro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます