らくがき
真白いろは
おつかい ケイト
「…あ。」
ある日、コウがつぶやいた。冷蔵庫を開けて。
「…先輩。醤油と牛乳がなくなりそうです。あと麦茶のパック。」
「…それは大変だ〜。」
「絶対思ってねえだろ。」
しょうがない。買ってくるか。そう思ったが、ガクに袖をつままれる。
「俺ら勤務中だろ?」
「う…。」
このめんどくさい書類整理から抜け出せると思ったのに…。
「じゃあ俺が…。」
「お前も、逃げんなよ?」
「…じゃあメイやるー!」
「…ってなるだろうが。俺行くって。」
「メイやりたい!」
「僕も行こうか?メイ1人じゃ心配でしょ。」
「メイやりたいー!」
「お前ら逃げたいだけだろ。」
ドンッ!
「私もやりたいって言ってんだけど。」
一瞬でメイが大きくなる。長くなった足で机の上に仁王立ちした。書類を足に敷いて。
「…降りろ。書類踏むな。」
「コウたちが聴いてくれないんじゃん!」
「はいはい、すいません。とりあえず降りていただけますか?」
「なにその言い方!」
「おいおいガキ2人が喧嘩モードに入ってるぞー。」
「…じゃあ、1500円あれば足りるかな?」
「え?いいのっ!?」
「跳ねるな。あー破れた…。」
「すぐ帰ってくること。悪い人に着いていかないこと。」
「はーい。」
リュックサックに財布を突っ込んで、すぐに飛び出てしまった。
「…よし。それじゃあ僕らも外行こうか。」
「え?外出るんですか?」
「…心配じゃん?」
「お前元々それが目的だっただろ…。」
少し急ぎめで歩いて探すと、メイはなにやら違う道を進んでいた。
いつもの白いワンピースに、少し大きそうな僕の靴を履いている。現在は15歳くらいだろうか。
「…あいつって方向音痴…?」
「かもな…。」
「…ハードル高すぎたかな…。」
僕ら3人不安になる中、メイはずんずんと進んでいく。そして、とある店の前で立ち止まった。レトロな見た目の、コンビニ拡大版のような店。ドアはなく、レジにはお婆さんが1人で座っている。
「こんなところに店あったんだ…。」
「知らなかったな。」
牛乳、醤油、麦茶パックを持ってレジへ。お婆さんは優しく対応してくれた。でもお釣りを見たメイは…。
「…これもお願いしますっ。」
と言って、ソーダアイスを差し出した。ちゃんと4本分。
「…あいつ…。まあ、そのくらいなら許してやるけど…。」
コウもガクもまんざらでもない表情だ。多めに渡しておいてよかったぁ。
買ったものを全てリュックに詰め、メイはあたりをキョロキョロと見渡す。そして…ストレッチを始めた。
「…悪い予感がするのは俺だけか?」
「大丈夫。僕もしてる。」
すると…メイは力いっぱい飛んで、屋根の上に着地した。あーやばい。遊び始める。
タタタッと軽やかな足取りで走って、跳んで、回ってを繰り返す。しかもそれがなかなか速い。コウも煩わしそうにするほどだった。
「ただいまー!」
「おかえり〜。」
「…なんでそんな疲れてるの?」
「なんでだろうねー。」
こうしてメイの初おつかいは幕を閉じ、僕らはアイスにありつけたのだった。
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