コミュ力 ガク

「あれ?ガクじゃん久しぶり!」

「おー!久しぶり〜!元気にしてたか〜?」


「ちょうどいいところに!ガク、ちょっと手伝って欲しいことが…。」

「なんだなんだ〜?任せとけ!」


「あの…これ落としました…。」

「あれ?あ、俺のだ!ありがとな。」


「…ガクってなんだかんだコミュ力高くない…?」

「ですねー…。」

「元酒屋だったから!」


 …お前らが低すぎるせいだろ…っ!いや、話せるには話せるんだけど、お前らはクセが強すぎるんだよ…っ!

 俺は心の中で特大ツッコミを入れながら初対面の人と話していた。


 まずケイト。


「あ…えっと…。」

(ヤバいめっちゃ怖そうな人なんだけど!ガクはやく来ないかなー!)


 うん。ビビりまくる。顔にはあまり出さないが、心の中はもうパニック状態だ。

 次にコウ。


「………。」

(…なんでめっちゃ見てくるんだろう…。あ、食おうと思ってる?警戒しとこ…。)


 圧が強い!見た目とも噛み合って、もうヤンキー状態になる。

 最後にメイ。


「…太ってる!」

(太ってて脂身だらけ!美味しくなさそう!)


 はい。こいつはもう論外。相手に指差して体型のこと言うバカがいるかぁ?

 だから話す時は大体俺がそばにいるようにしている。コウもやろうと思えばやれるらしいけど、なんだか怖いので抑えている。

 だから、4人全員で話を聞くとなったら、事前準備が必要になるのだ。


「いいか?ケイトは深呼吸3回。コウは警戒心無くせ。メイは…黙っとけ。」

「…来たよ…!なんかお偉いさんっぽいんだけど…!」

「ケイト怯むな。」

「大丈夫ですよ先輩。いざとなったら俺が…。」

「コウはそれやめろ。」

「…ハゲてる!」

「メイ黙れー?」


 そして結局、俺が話すことになる。

 コミュ力が高いわけじゃねえんだよ…。お前らが低すぎるんだよ…!

 さあ、もうこうなったら隣は見ない方がいい。

 コウがメイの口を塞ぎながらケイトの背中をさすり、ケイトはコウの目を覆っている。客は不思議そうにそれを見ている。気にしないでくださいと言ったところで、目の端がカオスなのだ。


 …俺がいないと、中央3番は成り立たないだろうなぁ。

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