【芸能界幹部会議】掌編小説

統失2級

1話完結

「我々、古川興行の所属タレントであった宮田真が先日、古川興行を批判する記者会見を開きましたので、我々は宮田との契約を解除致しました。そして、向こう30年に渡って宮田をテレビ業界から干し、更に政府からの助成金である100億円を元手に、手下のタレントやネット工作員を使い宮田の悪評を日本中に撒き散らして行きたいと思っております。ご出席の皆さま方のご賛同を宜しくお願い致します」古川興行の専務を務める眼鏡を掛けた小柄な老齢男性が発言すると、他の出席者たちは異口同音に「異議なし」と返答した。専務は「ありがとうございます」と謝意を表明する。続いて、司会の短髪の若い男性が「はい、1つの議案が可決されました。それでは次に発言したい方はおられますか?」とスタンディングテーブルの前に立ち会議テーブルとは少し離れた場所から、マイク越しに問い掛ける。すると、会議テーブルを囲んで座っている7人の出席者の内の1人である肥満気味の中年男性が口を開いた。「それでは、私にも発言させて頂きたい。我々、夏風プロモーションの所属タレントである稲咲美茉が、重要なスポンサーであるとある男性にスカトロプレイを要請されたところ、その男性に煙草とライターを投げ付けながら、罵詈雑言を浴びせてホテルの一室から逃走するという暴挙を働きました。従って、我々は稲咲との契約を解除致しました。稲咲は永遠に芸能界から追放し、傘下のメディアを使って稲咲の悪口を日本中に流布したいと考えております。ご出席の皆さま、どうかご賛同願います」他の6人の出席者たちは、ここでも皆、「異議なし」と返答した。会議は滞る事なくスムーズに進行する。次に発言したのは男装の細身の中年女性だった。「私共の秋山プロダクションに過去に所属していた島田明哉というタレントが、ラジオやYouTube等でアメリカ政府と日本政府への批判を繰り広げております。我々は再三に渡り島田に対して、その類の発言を取り止めるよう要請して参りましたが、島田には改める意志が無い模様です。そこで、島田にはハニートラップを仕掛ける事に致しました。ハニートラップを仕掛ける16歳の少女も既に用意しております。これは日本政府からの命令でも御座いますので、どうかご出席の皆さま方もご賛同願いますよう宜しくお願い致します」すると、他の6人の出席者たちの口からはこの日、三度目となる「異議なし」という言葉が発せられる事となるのでした。


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