第50話 竜宝族とアヴァロン
竜宝族とはなにか?
知らない、知りえない。秘匿されているが故に分からないと言うべきか。
少なくとも、ゲーム内にはいた痕跡だけが残されているだけのちっっっっぽけな種族だ。
データの破片、わずか一欠片のログに存在を認めただけに過ぎない、本当に僅かな種族。
わずか一欠片、そう。一欠片だけのテキストに記されているに過ぎないのには訳があると言う話だ。
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竜宝族
それは聖剣からこぼれ落ちた残滓より生まれし存在。少なくとも生きる価値は無い。人権もまた相応に無いに等しい。
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きらきらと輝く見た目は決して地味では無いし、むしろ威圧感すら感じさせてくれる。だが、残念な事に顔が見当たらないのだ。
というか────顔が、あるべき場所に無いと言うべきか?
人で言う頭蓋、魔物で言う頭角の部分に穴が空いている。その穴ははるか深く。深淵にも近しい程の他人を引き込む魅力を持つ穴である。
そしてそこを覗き込むと、魂を奪われる。……などという言い伝えがされていたりする程度にはあんまり詳しくわかっていない。
そう───何一つ分からないのだ。
◇◇
「……喋れないんですねこいつ!……特に敵意とか殺意とかは感じませんが、御二方ご存じですか?」
よく分からなかった俺は、ひとまず二人がなにか知っている可能性にかけて尋ねてみる。
まぁろくな答えが帰ってくる気がしないと言えばその通り。
「はて?ゲイルよ、こんなやつこの国にいたか? 少なくとも私は知らぬぞ」
「王が知り得ぬのであれば、私が知るわけないと思いますが。……ただ少なくとも、竜宝族ということだけは分かります。何故でしょうね、感覚的な何か───んん?分かりませんが不思議と懐かしさすら感じますね。ネルラ君は……そうですか、まぁ当然と言いますが知り得ぬと」
「そりゃあ当然か。ただ私はあまりこういった事柄に詳しくは無いのだ。少なくとも本を読む時間があれば筋肉を鍛えるようにしておったからな。わはわは」
気色悪い笑い方をするな。と思いながら俺は目の前でふらふらしている竜宝族を見た。
『 ネルラ、この子達は武器になってくれますよ?』
そんな事を悩んでいると、頭の奥底で伝えられた。
武器ねえ……。
そんなふうに思いながら、ふと俺はこいつらの頭の中の闇を覗き込みたくなってしまったのである。
まぁ、特に何も────、
「?!」
「なんだ?」「どうしたネルラ君。まさかやはりそうか、私と子供を作る気に」
「それは無いです。すみません、ただあの穴の奥を無意識に覗き込んだら……村がありました」
「「村?」」
◇◇◇
……ありえないと思った。あの、竜宝族の頭を覗き込んだところ────、
別の国というか、村?に転送されたのだ。
まさかの竜宝族ワープホールだったよ?!
というわけで俺達が辿り着いたのは、途方も無くでかくて───、途方も無く金銀煌びやかな巨大な町だったのだ。
【───廃れきったアヴァロンの園・東── 】
突如、ドゥゥウン!という音がして、謎に聞きなれたSEが聞こえた。
そして目の前に謎に文字が表示されたのだ。
なんだろう、死にゲーが始まるようなそんな嫌な感覚がひしめいているのだが。
転生魔剣士さんの平和な日常は破滅フラグと共に! ななつき @Cataman
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