この想いは間違いなのか、それとも。


児童養護施設「愛誠院」で職員として働く菅原楓は、高校生の頃に父親がある罪で逮捕されて以降、母方の性を名乗って人目を避けるように生活してきた。そしてもうひとりの主人公、星野いすず。12歳の彼女は被害者の娘で母親と離れて養護施設で生活している。

加害者の娘と被害者の娘。

本来、ふたりが同じ場所にいることは許されないこと。しかしいすずはそれをいっさい知らずに「楓さん」と慕い、淡い想いを抱きはじめる。

それは楓も同じで。最初の頃の守りたいという気持ちは違う想いへと変化していき・・・ふたりはいつしか周囲には言えないような仲に・・・。

百合小説ということもありますが、お互いの親が自分たちの人生を狂わせた元凶であることも相まって、禁断の恋というか愛というか、そもそも犯罪なのでは? という疑問はかなり野暮な話ですが、後々のふたりの関係にヒビを入れかねない問題が山積みなのです。

この物語を読んでいて不穏なのは、いすずの母親。この方は本当にいろんな意味で可哀想なひとなのですが。そもそもが全部自分が蒔いた種であること。

これはネタバレになるのでこれ以上は語りませんが、とにかくひと言でいえば重度のメンヘラちっくな女性なのです。そういう方が一番関わってはいけないだろうモノに関わっていたり。←これは読めばわかるのですが・・・現代社会において、こういう方がハマりやすいセカイというか。否定も肯定もしませんが。

まだ完結していないこの物語は、どこまでも優しいセカイでありながら残酷な現実が目の前にあり、ざくざくと心臓を刺してくるような、目を背けたくなるような場面もあるのですが、ふたりの背徳感を楽しむという意味では最高の構成だと思います。

悩み苦しみながら、ふたりが最終的に結ばれるのか結ばれないのか・・・。
どきどきハラハラしながら見守りたいと思います。タグにはハッピーエンドとありますので、そうなる過程を楽しみましょう。

百合小説が苦手な方(私も基本百合は好んで読みません)でも、現代ドラマを観ているような感覚で読める作品。

いろんな世代の読者に『読ませる力』が、この作品にはあると思います。百合というワードはいったん横に置いておいて、この物語をぜひとも楽しんでいただきたい! そんな風におススメできる作品のひとつです。