舞台は立ち入り禁止の空(から)の屋上。そこにはピンクの薔薇の髪飾りをつけた先輩がいました。その存在を唯一知る主人公の開青(かいせい)が先輩と屋上でかけがえのない日々を共有する恋愛小説です。
日記調に綴られる特徴的な仕様に注目してみてください。日付のページをめくるたび、紡がれるふたりの心の繊細な機微に、思わず感情移入してしまう魅力にあふれています。
特に永遠の喪失を感じさせる一年間は、なんとも形容し難い切なさとやるせなさに心が襲われ、激しく感情が揺さぶられることでしょう。
先輩が過去形で語っていた将来への願望――その亡くしていた言葉が奇跡の息吹となって熱を帯びると、終盤では開青の言葉によって芽吹き、花開いていく――この引き合わせていく展開が、とても印象的で心を打ちます。
そしていま大輪の花火の下、大好きな人に愛を叫んで未来を結ぶ、目頭の熱が涙を呼ぶ感動の物語です。