クタクタの足を何とか引きずって

 防空壕のぎりぎり一番奥に、彼女を横たえる。生きた人間の体というものは温かいのだなと、もう一度思った。あと、重い。さんざん死体を担いだから知ってるけど、意識のない人間って重い。


「よし、と」


 確かに戦闘に使える道具はもう残っていないけど、実は防空壕の中に一発だけ、大型の地雷が残されていた。これを起爆すれば、防空壕の入口を破壊することができる。うまくいけば、入口を掘り返す時間くらいは稼げるだろう。防空壕の広さから言って、中にいる人間が窒息死するよりは先に、そうなる。


 あとはそれまでの間に、終戦が成立しているかどうか、こればっかりは賭けだ。それは祈るしかあるまい。


 防空壕の入口まで来た。あとはこの地雷を起爆するだけだが、手榴弾と違って地雷というのは遠くに投げる方法がないので、誰かが至近距離で起爆する以外に信管を作動させる方法がない。つまり、何をどうやっても、俺はもう助からない。


「そいじゃ、行きますか」


 思いっきり力を込めて、信管を起動した。あとは、この手を離せば爆発するはずだ。


「はぁ。でもせめて、おっぱいくらい揉んでおけばよかったかな」


 さらば、友よ。いい男、見つけろよな。

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セカイノオワリ きょうじゅ @Fake_Proffesor

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