第12話 プリクラ


 プリント倶楽部……通称、プリクラですが。

 僕はこの機械が流行り始めたころ、ほとんど無縁の物でした。

 ぼっちだったので、一緒に撮る相手が居なかったからです……。


 それはさておき、当時の機種に比べると。時代と共に機能が進化しましたね。

 スタンプや背景に文字を書いたり、更には顔や体型そのものを加工するものまで。

 ここまで来るとおじさんの僕は、ついて行けません。


 たまに家族で撮影しますが、何がなにやらサッパリです。


 僕がとある繫華街のゲームセンターを、歩いていた時の話です。

 あまりゲームセンターで遊ぶのは、得意な方じゃないですが。

 今はアプリなどの特典を使って、無料のゲームが出来ますので。

 たまに遊んでいます。


 慣れないクレーンゲームで遊んでいると。

 ふと、近くにあるメイク台が気になりました。

 隣接しているプリクラで撮影をする前に、若い女の子たちがメイクしたり、髪型を整えるところです。

 入念にまつ毛を上げたり、化粧直しをしていました。

 

 ~30分後~


 僕は何回やっても、クレーンゲームで惨敗し、仕方なく帰ろうとしたその時でした。

 メイク台で、先ほどの若い女の子がまじまじと鏡を眺めていました。

 よく見れば、隣りに座っている子も同一人物でした。


(女子高生かな? お年頃だもんな……)


 しかし、ここで僕は思いました。


(待てよ……彼女たちは、気がついてないのではないか?)


(今のプリクラは、”あれ”が搭載されていることに!)


 そう思った僕は、メイク台に座る女子高生たちへ声をかけました。


「あ、あの……」


 突然、声をかけられた女の子たちは驚いていました。


「ひっ! な、なんですか?」

「その……今のプリクラ機なら、そんなにメイクする必要ないと思うんですよ」

「は?」

「僕の時代、20年前の機種ならほぼ無加工だったので、メイクも必要でしたが。今の機種は最初から”激盛れ”じゃないですか?」

「なにが言いたいんですか?」


 首をかしげる女子高生を見て、僕は深呼吸してからこう言いました。


「つまりですね。髪型ならセットしても意味あると思うんですけど。加工される顔はすっぴんでも大丈夫と言うことです!」

「……」


 デリカシーのない発言をした僕は、周りにいた若い女の子全員から通報された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る