第2話 自撮り その2


 最近のスマホは、画面がどんどん大きくなっているように感じます。

 僕が若い頃なんかはガラケーで、画質も悪く、画面も小さいので。

 写真撮影をしても画素が粗く、誰かわからない写真や動画が多かったです。


 しかし、今は技術が進歩して、高画質のカメラで撮影できますし。

 薄く軽いスマホをサクサク動かせます。


 僕がバスに乗っていた時の話です。

 前の方の席で、僕はひとりで座っていました。

 音楽を聴きながら窓の景色を見ていたら、前に座っていた若い女性がスマホを起動していました。


 それだけ彼女のスマートフォンが大きいということです。

 次の瞬間、僕はドキッとしました。

 彼女がカメラを起動して、”自撮りモード”にしたからです。


 女子大生ぐらいの女の子と、後ろに座っているおっさんの僕が、一つの画面に映し出されたのです。


(気まずい……)


 その子はどうやら、前髪が気になっているようで、手で整えていました。


 この瞬間、僕は思った。

 

(ひょっとして、この子は……。僕とツーショットを撮りたいのかもしれない)


 そう感じた僕は、身を前に乗り出します。

 後ろからピースをして、苦笑いをするおっさんに気がついた女の子が叫びます。


「ひいぃっ! なんなんですか!?」

「え? 僕とツーショットを撮りたいんですよね?」

「そんなわけないでしょ!?」

「……」


 結果、僕は通報された。

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