第4話 かわいい その2


 僕は生まれつき、肌が弱いです。

 そのため、皮膚科へ定期的に通っています。


 とある夏の日の出来事。

 暑くなってきたので、あせもや痒みなどの症状が酷くなりがちです。

 僕以外にもたくさんの患者さんで、待合室は溢れかえっていました。


 待合室でひとり座っていると、目の前に小さな赤ちゃんを連れた女性が現れました。

 お母さんは椅子に座って、赤ちゃんはベビーカーに乗っています。

 指をくわえながら、僕の方をじーっと見つめていました。


 こう見えて、僕は幼い子供にはモテる自信があります。

 何故だかわかりませんが、乳児から幼児までのお子さんにはよく見つめられたり、声をかけられるのです。

 ただ自我を持ち始めたお子さんには、嫌われるというか。

 「この人、気持ち悪い……」という、顔をされます。


 話が逸れました。

 いつものように、僕は黙って見知らぬ赤ちゃんと見つめ合います。

 あちらも話せないので、こちらも心で話すように心がけております。


 その時、待合室の出入り口から、二人の患者さんが入ってきました。

 ひとりは若い介護士の方で。もうひとりは車いすに座ったおばあさんです。

 介護士の方が受付をすませる間、僕と赤ちゃんのそばに車いすをとめていきました。


 おばあさんがベビーカーに気がついたようで。車いすから身体を起こして、こう言いました。


「うわぁ~ 可愛いかねぇ~ いくつぐらいかね?」


 この瞬間、僕は思った。


(なっ! 僕の可愛さがバレてしまったのか? ならば、ちゃんとお礼を言わないと)


 すかさず、僕は身を乗り出して、おばあさんにお礼をいう事にしました。大きな声で。


「いやぁ~ ありがとうございますぅ~! 今年で42才になるんですけど、アイドルを目指した方がいいですかね?」

「え? 私は、あんたじゃなくて、赤ちゃんのことを言っているのよ?」

「……」


 結果、僕は通報された。

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