冒険者ギルドを作りました

Jaja

第1章 崩壊する世界

プロローグ


 「Eランクの魔石は買取はこちらでーす!」


 「こっちでは低ランクの魔物狩り方の講習をやってまーす!」


 「魔石以外の素材の受け付けはあちらでお願いします!」


 「………なんとか形にはなったか」


 俺は目の前で行われてる魔石や素材を買い取りしてる風景を見て、ホッと一息を吐く。


 ここまで本当に長かった。なんとか形になって一安心である。


 「まだ小さい組合みたいなものですけど」


 「それで良いんだよ。最初からでっかくやってもこっちが対応出来ないんだから」


 「まあ、そうですね。これで私達も強くなれます」


 「うん。今までとは段違いのスピードで魔石は集まるだろうからね」


 世界が映画やラノベでよく見る終末世界になってかなり時間が経った。最初はいつか政府から助けがあると思ってた人達も、既に諦めている。


 そこら中に魔物が跋扈する世界では、救える人間は限られる。政府は大半の国民を切り捨てたのだ。


 「うへへへ。今日だけで5000円も稼げたぜ」


 「酒が飲めるな」


 建物の至る所でこんな会話がされている。酒を飲むなんて贅沢は少し前では考えられなかった。だからだろう、魔石の買い取りで得たお金を持った男達は、外にある飲食店に満面の笑みで向かう。


 「この剣でゴブリンをぐさりよ! 次はもう少しランクの高い魔物を狙ってみるか! 魔石や素材の買い取り金額が段違いだしよ!」


 「安全にいこうよ。死んだら元も子もないよ。ゴブリンだって油断出来ない相手なんだから」


 買い取り金額に喜んでる奴もいれば、今日のゴブリン戦を武勇伝のように語ってる奴もいる。


 うむうむ。それらしくなってきたな。


 「次はどの悪魔を呼ぼうか」


 俺は現状の光景に満足しながら、横の絶世の美女に話しかける。


 「ベリトやハーゲンティ、マルファス辺りがよろしいかと。ショップ頼りではいつか限界が来ます。早めに生産体制を整えておいた方が良いでしょう」


 「なんでそいつらなの?」


 「悪魔の権能がどうスキルに変わるか分かりませんが、今挙げた悪魔なら恐らく生産系のスキルを取得するかと」


 「なるほど? 名前は聞いた事あるかなぁって感じだけど、悪魔の権能とかは覚えてないんだよね。元厨二病罹患者として情けない限りです」


 たくさんいる悪魔の名前とか権能なんて一々覚えてないよ。有名どころだったら分かるけどさ。ルシファーとか。俺は召喚出来ないけどね。


 この俺の隣にいる美女悪魔も、知ってる名前だからとりあえず呼んでみるかーって感じで召喚しただけだし。


 邪な理由もあるけど。男の子だもん。仕方ないね。


 「遥人、アスモデウス、人が全然足りないよ」


 「ベリアル。遥人様です。『様』を付けなさい」


 「固い事言うなよ」


 「まあまあ。呼び方なんてなんでも良いよ」


 二人で話してると、びっくりするぐらい男前な青年がやって来た。まあ、こいつも悪魔なんだけど。


 「結構人を用意したつもりだけど、それでも足りないか。ここまで集まるのは予想外だったなぁ」


 「今まで害でしかなかった魔物を倒せばお金になるんだよ? そりゃこうなるよ。これから更に増えていくだろうね」


 「また新しく雇うか。その辺は良い感じにやってくれ」


 「分かったよ。でも…」


 「大丈夫。ちゃんとお前の魔石も確保しておくから」


 「それなら良いんだ」


 男前な悪魔はそう言って目の前の建物、冒険者ギルドに戻って行った。


 「ほんと、俺のスキルは何をするにしても、魔石が必要になるな。個人で集めようと思ったら、強くなる前に寿命を迎えてた」


 「ですね。ですがここからは違います」


 「ああ。みんなが魔石を集めてくれるシステムの雛形は出来た。ここから一気に日本全土に。いずれは世界に広めていくぞ」


 こういうのは初動が大事。他にも俺と同じような事をしてる奴らがいないとは限らないし。いや、少しでも目端が利く奴ならやってるだろうな。


 俺達は強くなる為に魔石を必要としてるけど、この魔石ってのはエネルギーに変換とか出来るかもしれない。ラノベとかでは定番だよね。魔石が万能エネルギーになるのは。


 そういうのを調べたりする前に、世界は魔物に飲み込まれたからなぁ。


 「引きこもってるお偉いさん達は調べてるんだろうな」


 「そうですね。何かしらのエネルギーに変換出来る可能性があるなら、調べて活用しようとするでしょう」


 大半の国民を切り捨てた政府は、どでかい壁を建てて引きこもっている。壁は恐らくスキル持ちの誰かがやったんだろうけど、食料とかはどうしてるのかな? 壁の中に入るには多額の金が必要だから、確認出来てないんだよね。

 

 「いずれ魔石の奪い合いなんて事もありえるか」


 「負けてられません。そうなった時の為に強くなりましょう」


 「だな。引きこもってる連中が強いのかどうかは分からんが」


 もしかしたら効率的にスキルを強くする方法とかを編み出したりしてるかもしれん。人によって、スキルを強くする方法は違うみたいだしね。


 俺は魔石が必要だけど、魔物を倒して経験値的なのを獲得するだけでスキルレベルが上がっていく奴もいる。


 壁の中に引きこもってる連中が、強さを確立する前に俺達の勢力を広げないとな。


 目標は世界中に冒険者ギルドを設立する事。それが出来れば座ってるだけで魔石が流れ込んでくるぜ。不労所得万歳。


 まあ、まだまだ遠い目標だけど。

 一体いつになるかね。

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